間もなく直面する「2025年問題」を考える:いまが分かるビジネス塾(2/4 ページ)
介護福祉士を養成する大学や専門学校は以前から定員割れが続いてきたが、2016年度はとうとう50%を割り込んだ。そのような中、日本は団塊世代が後期高齢者となる「2025年問題」に間もなく直面する。これまで介護の問題を先送りしてきたが、介護政策を根本的にどのように位置付けるのか、決断すべきときが近づいている。
財政上の問題から待遇改善は困難
こうした状況を受けて政府は、介護職員に関する情報発信、キャリアパスの構築、メンター制度といった施策を導入したが、肝心の賃金については、1人当たり最大月額3万7000円の加算にとどまっている。しかもこの加算は、全ての介護職員が対象になるのものではないため、業界全体としての待遇改善にはつながっていない。
政府がそう簡単に介護職員の待遇改善を決められないのは、財政的な理由が大きい。現在、介護保険制度からは年間約9.4兆円が支出されている。このうち、国と地方自治体が半額を負担しており、残りは国民が支払う介護保険料で賄われている。これによって介護サービスの利用者は原則として1割負担でサービスを受けることができる。
だが、この費用は今後、うなぎ登りに上昇する可能性が高い。2016年における75歳以上の人口は約1700万人だが、2025年には2166万人にまで増加する。これに伴って介護費用も増大し、2025年には今の2倍の約20兆円になるとの試算もある。これはインフレ率などを考慮した数字なので、インフレが進まなければ、ここまでの金額にはならない可能性が高いが、支出が大幅に増えることは確実だ。
要介護者が増えているところに、介護職員の報酬を上げてしまうと、介護保険からの支出総額はさらに拡大してしまう。日本は医療保険や公的年金など、あらゆる社会保障制度の財政が悪化しており、介護保険に対してのみ国庫支出を増やすことは難しい。財源が限られている以上、介護職員の賃金を大幅にはアップできないというのが財政側の理屈である。
一部からは介護の現場にロボットを導入することで、人手不足をカバーできるのではないかと期待する声も出ている。確かに、介護はロボット活用が有望視される分野の一つだが、必ずしも導入がスムーズに進むとは限らない。介護の現場はイレギュラーな作業が多く、しかも安全を最優先しなければならない。ロボットは扱い方を間違えるとかなり危険な存在となるため、一般的な業務用ロボットよりも高い安全技術が求められる。
こうした条件をカバーするロボットは高コストとなり、結局のところ財源の問題に突き当たってしまう。当面は、要介護者との簡単なコミュニケーションや状況の把握といった補助的な導入にとどまる可能性が高いだろう。
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