コーヒーと料理の相性を分析して、何が分かったのか UCCの試み:業界初のシステムを導入したところ(2/3 ページ)
UCC上島珈琲が、コーヒーとフードの相性を科学的に分析することができるシステムを導入した。その名は「フードマッチングシステム」。なぜ、このようなシステムを導入したのか。また、どのような効果が生まれているのか。
人間の舌は間違っていなかった
そもそも、なぜUCCはこのようなシステムを導入したのか。近年、コーヒー市場の多様化が進んでいる。コンビニでのカウンターコーヒーやサードウェーブコーヒーなどが増えているなかで、同社はコーヒーとフードの相性を科学的に解析することで、新たな指標を提案できるのではないかと考えた。喫茶店やカフェなどに自社製品を紹介する場合、これまでどのような方法で提案していたのか。コーヒーの味に詳しい「鑑定士」(UCCグループで40人ほど在籍)が、「サーロインステーキにはこれね」「ショコラケーキにはこれね」といった感じでススメてきたのだ。
従来は、人間の舌に頼ってきたわけだが、システムを導入することで、これまで見えなかった部分を数値することに。結果、サーロインステーキに合うのは、酸味を抑え深い味わいがするもの、ショコラケーキには、苦みとコクがあって香ばしい香りが広がるもの、がそれぞれ適していることが分かってきた。さまざまなフードとの相性を分析している、UCCイノベーションセンターの半澤拓さんに聞いたところ「分析してみて、一番驚いたのは、鑑定士がススメてきたコーヒーと、システムがススメるコーヒーが、ほぼ同じだったこと」。つまり、人間の舌は間違っていなかったということだ。
同じであれば、わざわざシステムを導入することはなかったのでは? 「これまで人間の舌で評価してきたので、どうしても抽象的な表現が多かったんです。ただ、システムは数値で表現することができるので、お客さんはより具体的に理解していただけるようになったのではないでしょうか」(半澤)。システム導入後、とあるカフェでこのようなポップがあった。「このケーキに合うコーヒーはこれです」といった形で、言い切る表現が増えてきたそうだ。
このほかにも、さまざまな効果が出ている。業務用のコーヒー豆は60種類ほど用意しているが、店側としてはどれを選んでいいいのか分からないことも。そうした場合、UCCはその店の商品を持ち帰って分析し、そのフードに合うコーヒーを提案することも。また、とあるベーカリーショップとは取り引きがなかったが、店のパンを分析。相性のいいコーヒーを提案するだけでなく、その店のオリジナルコーヒーを開発し、結果、新たな取り引きにつながった。
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