600億円超えたシリアル市場 各社どう戦う?:カルビー追うケロッグ、日清シスコ(2/2 ページ)
急成長を続けるシリアル食品市場。2016年には出荷額が621億円、対前年比で15.7%増となった。それをけん引するのがグラノーラだ。トップを走るカルビーに対し、日本ケロッグ、日清シスコはどう攻勢をかけていくのか?
開発を急いだ「スーパー大麦 グラノーラ」
これまでケロッグの独壇場だった機能性にアプローチしていく――。
これが日清シスコの打ち出す戦略だ。それを示すのが2016年秋に発売した「スーパー大麦 グラノーラ」。これはオーストラリア連邦科学産業研究機構が開発したスーパー大麦「バーリーマックス」を原料にしたもので、一般の大麦に比べて2倍以上の水溶性食物繊維と、4倍以上のレジスタントスターチ(難消化性でん粉)を含む。スーパー大麦 グラノーラは、バーリーマックスを1食分(50グラム)あたり4グラムを配合し、1日に必要な食物繊維の3分の1以上を摂取することができるのが特徴だとする。
このように機能性には定評があるものの、味の改良には苦心したという。「スーパー大麦はボソボソしていて食べにくい。そこでクセのある食感をなくすために、しっとり系のフルーツであるクランベリーやレーズンを加えることで課題の解決を図った」と日清シスコ マーケティング部 第二グループの松長直樹ブランドマネージャーは振り返る。
さらに商品開発を急いだ。健康ブームの中でスーパー大麦が注目されることを先読みして、通常は約半年かかるところを3カ月間で完成にこぎつけた。2016年12月にイトーヨーカドーで先行販売を開始し、2017年1月から一般発売した。
他方、おいしさに特化したグラノーラに健康要素を織り込んだのが、リニューアルした「ごろっとグラノーラ」だ。
これまで他社のフルーツグラノーラに対して具材の量や大きさで差別化を図ってきたが、さらに具を大きくして増量した。そこに健康価値を与えるために食物繊維の量を増やすとともに、バーリーマックスをシリーズ全商品に配合した。
味にも改良を加えた。その1つが「いちごづくし」だ。これまで同社はフルーツの中でパインへのこだわりが強かったが、消費者調査の結果、いちごの人気が群を抜いて高いことが分かった。いちごに関して、日本ケロッグの商品はスライスカット、カルビーの商品は大きさをアピールしているため、日清シスコは両社のいいとこどりで、大きくて、スライスカットしたものを採用した。
この数年は急速な右肩上がりだったシリアル食品市場だが、「まだ日本に定着したとは言えない」と松長氏は話す。1000億円の市場規模を超えて、ようやく消費者に広く認知されるようになるのではと見ている。
また、日清シスコとしては、グラノーラ一辺倒ではなく、引き続きコーンフレークにも力を入れていく。なぜならコーンフレークは成長こそしていないものの、年間100億円前後で安定的に推移しているからだ。「決してコーンフレークは“終わった”商品ではない」と松長氏は意気込む。
成長の勢い衰えぬシリアル食品市場。消費者を飽きさせない各社の新たな一手に注目したい。
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