電子書籍取次メディアドゥ、大幅成長「LINEマンガ」堅調で: 今期は大型M&Aが功を奏するか
電子出版取り次ぎのメディアドゥの2017年2月期(16年3月〜17年2月)の通期決算は、売上高が前年比38.2%増の155億3200万円、営業利益が18.9%増の6億5600万円と増収増益。今期は大型M&Aが功を奏するか注目が集まる。
電子出版取り次ぎのメディアドゥが4月6日発表した2017年2月期(16年3月〜17年2月)の決算(単体)は、売上高が前期比38.2%増の155億3200万円、営業利益が18.9%増の6億5600万円と増収増益。純利益は23.9%増の4億1400万円だった。
主力の電子書籍事業は、売上高142億2300万円(33.9%増)、セグメント利益5億8400万円(23.1%増)と順調に成長した。「国内事業拡大」「海外流通展開」「電子図書館展開」を基本方針とし、積極的に拡大施策に取り組んだ。
国内では、「LINEマンガ」(LINE)などの大型電子書店へのディストリビューション(流通)が堅調に推移するとともに、「楽天マンガ」「凡例タイムズ」「GEOマンガ」への配信ソリューションやシステムの提供、法人向け電子書籍サービス「bizbook」の開始などを行った。
海外展開では、米国子会社「Media Do International」を設立、韓国の大手電子書籍ストアTOPCOへのコンテンツ配信を国内外で参加した。海外の主流である「カラーマンガ」を強化するため、カラーリングノウハウを持つアルトラエンタテインメントから事業譲渡を受け新会社を設立し、体制を強化した。
電子図書館展開では、国内事業展開ブランド「OverDrive Japan」の専用Webサイトを開設。福井大学や香川県まんのう町立図書館に、電子図書館システムの提供を開始した。
音楽・映像事業は、モバイル有料音楽配信市場の縮小の影響を受け、売上高3億400万円(21.0%減)、セグメント利益5300万円(11.2%減)と減収減益。ゲーム事業も競争激化から売上高3500万円(34.3%減)、セグメント利益340万円(38.7%減)と縮小した。
その一方、大きく成長したのは広告代理コンサルティング業務。取扱量が増加し、売上高9億7000万円(431.0%増)、セグメント利益1500万円(29.9%増)と急拡大した。
今期は、引き続き電子書籍事業における成長路線を継続する。また、組織整備や人員体制を強化し、さらなるM&Aも視野に入れた事業拡大や技術力強化施策を推進していくという。業績見通しは開示しなかった。
メディアドゥは3月31日、同業で業界最大手の出版デジタル機構を、約80億円を全額借り入れ、子会社化した。出版デジタル機構の17年3月期の業績見込みは、売上高200億6900万円、営業利益10億6500万円。メディアドゥ全体の売上高と営業利益を上回る事業を獲得した。
また、同日に国産Webブラウザの開発を行うLunascapeの子会社化を発表。取得額は約3億7900万円。Lunascapeは売上高・営業利益ともに伸び悩んでいるが、「今後電子書籍UIにおいてブラウザの位置付けが重要になってくる」と考え、読書インフラ環境の向上とデジタル流通の加速を狙う。AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット化)、ブロックチェーンなどの先端技術を取り込んだ研究開発も行っていくという。
電子書籍市場は特にコミック分野が急成長している。大型M&Aが功を奏するか、同社の今期に注目が集まる。
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