東芝問題で「日の丸レスキュー」構想が出てきたワケ:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
揺れに揺れている東芝問題は、今後どうなるのか。終息する気配がうかがえない中で、やっぱりこのタイミングで出てきた。日本のお家芸といってもいい「日の丸連合」のことである。さて、この日の丸連合……うまくいくのだろうか。
中国に勢いをつけさせたくないという動き
実は近年、中国の半導体大手、紫光集団(ユニチンファ)が米国の半導体企業に手を伸ばして、政府から「待った」がかかるケースが続発している。
例えば、今回の交渉相手として名が出ているウェスタンデジタルは紫光集団が筆頭株主になるという話があったが、米政府がつぶした。有力候補とされるブロードコムも、紫光集団の子会社で、半導体の設計・開発を手掛ける展訊通信(スプレッドトラム)と提携している。
中国はどうにか3次元NAND(従来の二次元メモリーよりも高密度のストレージを生み出す)の開発にまではこぎつけたものの、大量生産するノウハウがない。そこで米国の半導体企業を買ってしまえという動きがあり、それを米政府が牽制しているというわけだ。そう聞くと、「自国の技術が流出するのを恐れているのだな」と思うかもしれないが、そいう保護主義的な発想だけではない。日本政府が必死にマスコミにふれまわっているように、半導体技術は軍事転用が可能である。その技術を中国が持つのをどんな手を使ってでも阻止をしようという米国の強い意志も感じられる。
それを象徴する出来事が、オバマ政権時に起きている。ドイツの半導体製造装置メーカー「アイクストロン」の米国内にある子会社を中国企業が買収しようとした際、大統領令を発してこれを阻止したのだ。「米国の安全保障の脅威になる」ということが理由である。
米国内にあるとはいえ、ドイツ企業の買収案件に口を挟むくらいだから、いかに米国が中国の半導体技術を懸念しているかがうかがえよう。
憲法よりも「日米安保」が優先されることからも分かるように、この国の政治家や官僚にとっては、なにをおいても米国との安全保障というものが優先される。
中国の紫光集団はいまNANDの世界トップであるサムスン電機の2倍の投資計画をぶちまけて「猛追」を始めている。この勢いのまま東芝の技術を手にしたら3次元NAND市場でも中国が一気に台頭していく可能性もあるのだ。半導体競争は勝者がすべてを得られるが、敗者には何も残らない。
そうなれば、軍事競争も含めて水面下でさまざまなつばぜり合いをしている米中のパワーバランスも大きく変えてしまうことでもある。
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