企業のデジタル変革、障壁は「既存ビジネス」:有識者に聞く(4/4 ページ)
ゼネラル・エレクトリックが好例のように「デジタルトランスフォーメーション(DX)」によって新しいビジネスモデルを創造しようとする企業が増え始めている。ITmedia ビジネスオンラインでは、DXに関する有識者や専門家たちの意見をシリーズでお伝えしていく。
――デジタルビジネスに関して、業種によって向き、不向きがあるのでは? また、すべての会社がデジタルビジネスに取り組む必要はあるのでしょうか?
意見が分かれるところだと思いますが、私はすべての産業が対象だと考えています。濃淡はあるものの、どんな業種であっても何かしらの可能性があると思います。
中でもサービス業はデジタルビジネスとの相性が良く、顧客との接点を持つサービス業から広がっていくだろうと思っています。人間の仕事がすべてロボットに置き換わることはないにせよ、接客をロボットやAI(人工知能)がサポートすることは十分考えられます。既にコールセンターでのAI活用は現実のものとなっています。
そのほか医療や教育、政府の領域でもデジタルとの相性は良いと思うのですが、日本は規制が非常に強く、一筋縄にはいかないでしょう。
――規制がボトルネックに?
例えば、3Dプリンタを使えば個人でもさまざまなものが作れます。クリエイティビティがどんどん生まれるチャンスだと思うのですが、その作ったものの安全面や衛生面で何かトラブルが起きたときの責任は、現在の法律上はその個人にあるのです。すると普通なら恐くて作れないですよね。
ただし、一昔前に比べると規制緩和は早くなっています。FinTech(フィンテック:金融とITを組み合わせた造語)推進に向けた銀行法の改正など、議論が起きてから法改正までの期間が短くなっています。安倍政権は今、IoT(モノのインターネット)やAI、ロボットなどを活用したデジタルビジネス推しで、ここで数十兆円稼ぐと言っています。この盛り上がりは期待したいところです。
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