「排せつ予知」に世界が注目 介護業界をどう変える?:“失禁”が生んだ新技術(2/3 ページ)
2017年にサービスを開始した排せつ予知ウェアラブルデバイス「DFree」――。既に全国の介護施設から申し込みがあり、海外からも30カ国以上から引き合いがきているという。DFreeは介護業界をどのように変えていくのか。中西敦士社長に話を聞いた。
「DFree」は介護の現場をどう変えるのか
多くの介護施設では、排せつに関わる業務が業務全体の約3分の1を占めていることもあり、介護スタッフの大きな負担となっている。
要介護度の高い利用者は尿意や便意を感じ取ることができなかったり、「トイレにいきたい」とうまく言葉で伝えられない場合が多い。そのため介護スタッフは定時に利用者をトイレに誘導するのだが、タイミングよく排せつできるケースは少ない。結果、ベットでお漏らしをしてしまう。
しかも、重度の認知症を患っている利用者などはオムツに出した排せつ物を手で触り、壁やイスなどを触ってしまうこともあるため、その後始末が重労働となっているのだ。
DFreeを活用し、排せつのタイミングが分かれば、こうした煩雑な業務を軽減することができる。実際、DFreeを導入した施設は人件費を平均で約30%削減できているケースもあるという。
もちろん、DFreeで恩恵を受けるのはスタッフだけではない。中西社長は「排せつの問題をなくすことは、施設利用者のQOL(生活の質)を改善することにもつながる」と話す。
「とある利用者は、これまでトイレの不安があったため外出を控えていました。天気の良い日でも散歩にいくことができなかったのです。しかし、DFreeを活用すれば、あと何時間で排せつのタイミングがくるのか分かるため、安心して外出できるようになりました。人間としての尊厳も守られ、自分らしく生きることをサポートしてくれるわけです」
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