「無人コンビニ」の普及がもたらす経済的インパクト:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
米Amazon.comが3月にオープンする予定だった無人コンビニ「Amazon Go」のプロジェクトが遅延している。無人コンビニは技術的難易度が高く、トラブルが多発することは容易に想像できるが、本格的に普及した場合の影響は大きい。無人コンビニは社会や経済に対してどのような影響を与える可能性があるのか。
「Amazon Go」が社会・経済にもたらす影響とは?
米Amazon.com(以下、アマゾン)が現在準備を進めている無人コンビニ「Amazon Go」には、レジという概念が存在しない。Amazon Goを無人レジのコンビニと勘違いしている人も多いが、その認識は根本的に間違っている。Amazon Goにはレジそのものが存在しないので、顧客はレジで会計をせずに欲しい商品を手に取ってそのまま店を出るだけでよい。ではどうやってアマゾンは顧客から代金を徴収するのだろうか。
Amazon Goの利用者は、あらかじめスマホに専用アプリをダウンロードして入店する。店内では無数のカメラやセンサーが動作しており、AI(人工知能)が常に状況を解析。顧客が商品を手に取ったと認識すれば、自動的にアプリの買い物カゴに入り、店を出るとアマゾンのアカウントで課金される仕組みになっている。
アマゾンでは一連のシステムについて詳細を明らかにしていないが、一度手に取った商品でも棚に戻せば課金しないということなので、基本的には人の動きの認識がシステムのカギを握っているようだ。
米ウォール・ストリート・ジャーナル紙などが報じた内容よると、Amazon Goは技術的な課題に直面しており、スケジュールに遅延が生じている。具体的には、一度に大量の顧客が入店するとシステムが顧客の動きを追えなくなるという。顧客の動きが遅い場合や、少人数の場合には正常に稼働するということなので、システムのブラッシュアップが必要と考えられる。
新しい技術であることを考えると当初はトラブル続きとなる可能性が高く、スムーズに事業を拡大できるのかは現時点では何ともいえない。さらに言えば、同社が無人コンビニを成功させたとしても、すぐに日本の小売業界が変わるわけではない。しかしながら、Amazon Goが経済や社会にもたらす潜在的な影響力は極めて大きく、この技術を過小評価すべきではないと筆者は考えている。
では無人コンビニが普及すると、経済や社会に対してどのような影響を及ぼすのだろうか。限られた情報の範囲で推測してみたい。
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