顧客の顔が見えない企業は「個人商店」に戻れ:なぜデジタルビジネスは必要か(4/5 ページ)
商店街にある八百屋のような個人商店は、毎日来るような近所の住民が客なので、1人1人のことを深く理解しながら商売している。ところが、顧客が数百万人もいるような大企業になるとそうはいかない。どうすればいいのだろうか……?
ステージ2の課題
――企業がステージ2に進む上で何が課題になっているのでしょうか。
分かりやすいジレンマは、ステージ2ではどうしても現行のプロダクトとカニバリゼーションを起こします。ある意味、サービスを売るのは、モノはタダでも提供するということですから。
そのカベを超えなければ本当のサービスは生まれないので、採算を別に考えるとか、評価やKPIの設定を工夫するとかしなければなりません。これまでの事業と横並びで育てようとすると矛盾が生まれます。
もう1つはケイパビリティ(企業全体の組織的な能力)です。これまで顧客の仕様通りにモノを作って納品していたときとはリードタイムがまるで異なりますし、顧客のニーズもすぐに変わります。それに対して素早くフォローアップしていくために、人材やチームをどう組織するのかが課題になっています。1つの解は、今まで商品ごとに部署が立っていたのを、すべての商品を横軸で見る組織にして、顧客に面でアプローチすることですね。
――既存ビジネスを発展する形でのデジタル化もあるし、新規事業のように別物としてデジタルビジネスに取り組むという選択肢もありますか?
これはある論文で書かれていたのですが、既存ビジネスをデジタル化する場合、売れてない製品を使ってサービス化しようとするのは駄目だということです。自社で最も強い製品でサービス化することに挑戦するのが大事です。もしくは、おっしゃるようにまったく別の事業、会社としてやるべきでしょう。
――どうしても既存ビジネスで一番強い部分には手を入れたくないと考える企業が多いのでは? そこを新たにデジタル化するのは大変そうですが。
例えば、トヨタ自動車がDCM(データ・コミュニケーション・モジュール)という車両からデータを取る機器を搭載しているのは、同社のフラグシップ製品の1つであるレクサスです。分かっている企業は既にそう取り組んでいるのです。
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