顧客の顔が見えない企業は「個人商店」に戻れ:なぜデジタルビジネスは必要か(3/5 ページ)
商店街にある八百屋のような個人商店は、毎日来るような近所の住民が客なので、1人1人のことを深く理解しながら商売している。ところが、顧客が数百万人もいるような大企業になるとそうはいかない。どうすればいいのだろうか……?
大企業も個人商店に
――企業がデジタルビジネスを進める上で、まずはどういったところから取り組むべきでしょうか?
2つあります。1つはそれぞれの企業が何のために生まれたのか、つまりビジネスの本質や意義、価値を見つめ直すことが大事です。時代とともに商品や事業が変わっていく中でも変わらないDNAがそれぞれの企業にあるはずです。それを今の時代のテクノロジーや顧客ニーズに当てはめたとき、何をすべきなのか考えるべきでしょう。世の中は変わっていると言いますが、その企業が提供する根本的価値は変わらないし、それが企業のブランドであるわけです。
もう1つは、それをする実行する上でも、もう一度、顧客目線で100%考える必要があります。商品目線ではなく、本当に顧客が求めているものを捉え直すべきです。
――ビジネスの本質を見つめ直した結果、企業によってはデジタル化しなくてもいいということはあるのでしょうか?
Every Business is a Digital Businessという言葉通り、すべての企業が対象です。よくこうした問いを受けるとき、「今の巨大な企業規模を維持しながら、昔ながらの個人商店に戻れますよ」とお話しします。
個人商店というのは、近所の住民が客で、毎日のように買いものに来てくれるから、その客がどんな人で、どんな家族構成で、何をしているかが全部分かるということです。1人1人の顔を見ながら商売をしているわけです。ところが、仮に顧客が100万人にまで増えると状況は一変し、1人1人の顔は見えなくなります。
デジタル化はたとえ100万人になったとしても顧客の顔がテクノロジーの力で見えるようになるのです。そういった1人1人の顧客が自社に何を求めているのかを吸い上げて、それに対応するというのはすべての企業がやらなければいけないでしょう。裏返すとテクノロジーやツールがそれを可能にしているのに、昔ながらのマスプロダクションをやっていても、顧客には到底受け入れられないと思います。
――業種に関係なくデジタル化が必要ということですね。
もちろんその中身は業種や業態、あるいはB2C、B2Bによっても違います。すべてのビジネスがデジタル化するというのは、ある1つの形にあらゆる企業がならなくてはいけないということではなく、自社のビジネスの本質を顧客目線で見直したときに、最も良いデジタルの活用を考えるということです。
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