顧客の顔が見えない企業は「個人商店」に戻れ:なぜデジタルビジネスは必要か(2/5 ページ)
商店街にある八百屋のような個人商店は、毎日来るような近所の住民が客なので、1人1人のことを深く理解しながら商売している。ところが、顧客が数百万人もいるような大企業になるとそうはいかない。どうすればいいのだろうか……?
AIに頼らないと日本社会は厳しい
――4年前にデジタルビジネスと言い始めてから顧客企業に変化はありましたか?
4年前に「Every Business is a Digital Business」というビジョンを打ち出したとき、大多数は「また新しいこと言いやがって」などと反応が悪かったのですが、ごく一部の会社からは納得感を得られました。
翌年くらいからeコマース、あるいはマーケティングでデジタルを活用するという顧客接点のデジタル化に力を入れ始める企業が出てきました。
昨年ごろからはドイツの「Industry 4.0」のような動きをとらえ、日本企業も意識が変わってきており、製造業を中心にIoTやAIなどをテーマに企業全体でのデジタル化の取り組みが本格化しています。
――意識が変わった要因は?
1つは、デジタル化によってモノづくりが問いを突き付けられていることです。日本は自動車産業を筆頭に、モノづくりで立国した国です。今後、工場がIoT化して、Industry4.0の世界が実現していくと、日本企業がこれまで強みにしてきたすり合わせの文化や匠の業といったものが、どんどんデジタルに取って代わられる可能性があります。
モノづくりもサービス化の方向へ行かなければ、日本の屋台骨だった産業が最終的に競争力を失ってしまうリスクがあるのです。実際に家電やハイテクの世界で既に起きたことが、自動車産業で起きないとは限りません。
もう1つは、AIなどの必要性です。よくAIは人間の仕事を奪うなどと言われていますが、日本は少子化によって労働人口が減少していくので、むしろAIに頼らないと生産性を維持できないと思います。そうした運命に日本はあるので、日本企業のデジタル変革はこれからの社会を支えていくためにも必須なのです。
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