番組制作費を削減し続けるフジに未来はあるのか:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
フジテレビは人気番組を制作することで業績を回復させようと試みてきた。しかし、2〜3年前くらいからそれも難しくなってきたのだ。収益低下に歯止めがかからず、コンテンツビジネスの核心部分である番組制作費の削減に手を染めてしまったからである。
フジ・メディア・ホールディングス(HD)を30年にわたって率いてきた日枝久会長と、ドラマ「踊る大捜査線」のヒットで知られるフジテレビジョン(以下、フジテレビ)の亀山千広社長が業績不振の責任を取って退任する。一部からは日枝氏は相談役として院政を敷くとの報道もあるが、会長ポストを去ることの意味は大きいだろう。
フジテレビは2013年に亀山社長が就任して以後、坂道を転げ落ちるように視聴率が低迷した。グループとしては多角化が進んでいるものの、業績の多くをフジテレビに依存している図式は変わらない。業績低迷に苦しむフジテレビの実情を探った。
一人負け状態のフジテレビ
フジ・メディアHDの2017年3月期の業績はかなり厳しいものだった。売上高は6539億円と前年をわずかに上回ったが、営業利益は223億円と前年比8.5%のマイナスとなった。同社は事業の多角化を進めており、中核である放送事業の売上高は全体の半分程度まで下がっている。だが放送事業が収益を支えている図式に変わりはない。
最大の稼ぎ頭であるフジテレビの売上高は前年比3.2%減の2805億円、営業利益は前年比27.0%減の40億円とかなり厳しい状況だ。フジテレビが稼げなければ、グループ全体の業績も低迷することになる。
フジテレビの業績が冴えないのは、当たり前のことだが視聴率が低迷しているからである。亀山氏が社長に就任した13年の年間視聴率(ビデオリサーチ調べ)は7.1%で、民放キー局5社の中では3位だった。ところが他社の視聴率が上昇、もしくは横ばいで推移する中、フジテレビだけが年々視聴率を落とし、16年は5.7%まで低下。キー局での順位は4位に落下した。フジテレビより下は相対的に規模の小さいテレビ東京しかない状況なので、同社の視聴率低迷はかなり深刻といってよいだろう。
フジテレビが低迷している最大の要因は、稼ぎ頭であるゴールデンタイム(午後7〜10時)での視聴率落ち込みが激しく、いわゆる人気番組で高い視聴率が取れていないことである。当然のことながら、視聴率の低下は広告収入の低下をもたらすことになり、17年3月期におけるフジテレビの放送収入(地上波のみ)は前年比で5.6%も落ち込んだ。
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