加速するクラウド化 影響を受ける仕事は?:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
近年、企業のITシステムが次々にクラウドにシフトしている。三菱UFJフィナンシャル・グループも、Amazon Web Servicesへの移管に向けて動き始めた。今後、日本においても本格的にクラウドシフトが進んだ場合、社会・企業にはどのようなインパクトがもたらされるのだろうか。
クラウドの進展は企業の組織をさらにフラットにする
クラウドの進展は、それを利用する企業にも変革を迫ることになる。あらゆるシステムがクラウドに集約されることになると、社会全体で必要となるサーバの台数は最適化される。場合によっては、従来では考えられなかったコストダウンが可能となってくるのだ。
従来のITシステムはアクセスの集中など負荷のピークを考え、能力に余裕を持たせた状態で構築されていた。つまりIT投資の何割かは無駄な支出だったことになる。しかし、クラウド事業者がサーバを集中管理すれば、負荷の変動を従量課金制で動的に割り振れば良いので、全体で必要となるサーバの台数は最小限で済む。
近い将来、世の中からは「ITへの投資」という言葉は消え、全てが「フロー」となり、時間単位で利用するものへと変ぼうするだろう。また、こうした変化は、最終的には企業における業務の階層化(水平分業化)を一気に進めることになる。
ITが時間単位で利用できる単なるサービスということになると、企業における管理部門の仕事の位置付けも変わってくる。それぞれの部門が“クラウド化された管理部門”を持てば全社横断的な管理部門は必要なくなるかもしれないのだ。組織の形態はますますシンプルになってくるだろう。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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