共謀罪で露出が増えるスノーデンは英雄なのか:世界を読み解くニュース・サロン(5/6 ページ)
NSAの機密情報を暴露したエドワード・スノーデンの名前をよく目にする。かつて日本で暮らし、日本文化が大好きだという彼は、海外でどんな評判なのか。また彼が語っている話は、どこまで信ぴょう性があるのか。
当初の理念はどこかに行った
オリバーの質問に対し、スノーデンはのらりくらり対応しているが、要は読んでいないのである。
こうした指摘だけでなく、暴露情報が結果的にビジネスとして利用されてしまっているのではないかとの指摘もある。スノーデンの莫大なリーク書類を受け取ったグリーンウォルドは、盗み出された機密情報を暴露するという名目で、IT系企業家から2億5000万ドルの投資を受けて自身のニュースサイト「ザ・インターセプト」を2014年に共同設立した。そこでスノーデンが盗んだ機密情報を小出しに暴露しながら、読者を獲得している。
またグリーンウォルドがNSAの暴露情報のうち、「無実の人に危害を与えないもの」で「他国を利しないもの」を公表し、「最も議論を起こす方法で掲載したい」と2013年のスピーチで述べていることなどから、英公共放送のBBCや英インディペンデント紙を経て英エコノミスト誌などに寄稿する英国人ジャーナリスト、エドワード・ルーカスは、著書『ザ・スノーデン・オペレーション』の中で、「グリーンウォルドは何様のつもりだ」と批判をしている。
またルーカスはこうも書いている。「そもそも、合法的な権利を行使する情報機関や機関トップを監視する権限を憲法上もつ、選挙で選ばれた国の政府やリーダーたち、裁判所や国会議員たちがNSAなどに(監視の)権限を与えているのである」
少なくとも、スノーデンの当初の告発動機である「国民が決めなければいけないものだ」という2013年6月の理念は、どこかに行ってしまったようだ。
スノーデンに対するこうした批判的な指摘があっても、彼が天才的な技術者だった評判は変わらない。ただ高卒の彼が自称していた大学などの学歴を盛り過ぎていたことが確認されており、例えば「夏の特別コース」に参加したことを「卒業見込み」と書いていることもあった。もちろん、そんな話は内部告発とは何ら関係ないのだが、彼の人となりを知るちょっとした材料にはなるだろう。
そんなスノーデンは最近、積極的に日本にからんだ発言をしている。例えばNHKは4月、スノーデンが暴露したNSAの機密文書に、新たに日本にからむ13の内部書類があったと報じた。その中でひとつ気になったのは、「Xkeyscore(エックスキースコア)」という大規模監視プログラムをNSAが日本側に供与したという文書があったことだ。
これについては、やはりグリーンウォルドの「ザ・インターセプト」が、NHKと共同で記事を掲載している(参照リンク)。「NHKとのパートナーシップによる記事」と書かれた同記事には、このエックスキースコアに関する文書そのものがリンクで掲載されている(参照リンク)。またNHKはこの13ファイルを大々的に報じるに当たって、スノーデンにもインタビューを行ない、放映している。
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