あなたが電車内で失った“忘れ物”の運命:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)
梅雨入りを控えて、ということだろうか。阪急電鉄と相模鉄道が、乗客の忘れ物に関するプレスリリースを出した。阪急電鉄は傘の保管期間を短縮するという告知、相模鉄道は2016年度の忘れ物件数が過去最多になったという報告だった。持ち主は忘れていても、忘れ物を預かる側はいろいろ手間がかかる。
東京都では1年間に36億円も落ちている
景気が良くなったと思える話題として、5月23日、相模鉄道と相鉄バスは共同で「2016年度のお忘れ物件数が8万4759件で過去最多」と発表した。前年比4158件の増加だという。最も多い忘れ物は傘で、2万2671件。梅雨の6月と台風や秋雨の9月に多いそうで、この報道発表も梅雨を控えて「傘を忘れないで」という意味を含めているようだ。1日に300本が届けられる日もあるという。忘れ物2位は袋、封筒類。書類や手紙だろうか。
鉄道事業者にとって、忘れ物の保管、手続き費用も見過ごせない。阪急電鉄と相模鉄道の報道発表は、小さな悲鳴とも言えそうだ。
相模鉄道の報道発表で注目すべきところは、3位の現金。総額は表記されていないが、件数としては5839件、前年比10%の増加となった。小銭を落とす程度なら仕方ないとして、財布などは取り戻したい。
ちなみに、報道によると、東京都内で2016年に落とし物として届けられた現金は約36億7000万円だった。産経新聞の記事によると、7年連続の増加。過去最高記録となった。バブル景気のころの1990年に記録した約35億円を超えたという。ただし、2016年は返金額も過去最多の約27億円で、取り戻した人も多かった。いずれにしても、差し引き約10億円が拾い主のものになり、拾い主が権利放棄した場合は東京都の歳入となった。
東京都では年間で36億円以上も現金が落ちている。そう思うと、なんとなく下を向いて歩きたくなる。しかし空を見上げれば梅雨入りだ。くれぐれも傘をお忘れないように。
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