AKB48選抜総選挙、沖縄開催の“本当”の理由:誘致合戦も活発に?(4/6 ページ)
今週末に沖縄で「AKB48選抜総選挙」が開催される。同イベントは毎年大きな経済効果を生み出していて、今や地方の企業や自治体にとっても喉から手が出るほどのものになった。これまでは姉妹グループがある都市で開かれていたが、現状その条件に該当しない沖縄は“異例”。その舞台裏に迫った。
このころの沖縄のコンビニ市場は、沖縄ファミリーマートのほか、ローソンやココストア、ホットスパーなどがしのぎを削っていたが、現在のように沖縄ファミリーマートのブランドが消費者に浸透しておらず、売り上げもそこそこだったという。
どうすれば強いブランドを確立できるのか。当時、沖縄ファミリーマートの取締役だった糸数氏は考えた末、今まで同社で使ったことのないような予算をかけて、ほかではほぼ実現不可能な音楽イベントと、それに連動したキャンペーンを企画した。
それが安室奈美恵さんやDA PUMP、SPEEDの今井絵理子さん、hiroさん、上原多香子さん、Folder5など、当時大人気だった沖縄出身アーティストを一堂に集めた音楽フェス「ミュージックフェスト・ピース・オブ・リュウキュウ」だった。しかもこのイベントはクローズドで、チケットは一般販売しなかった。ファミリーマートで買い物して、そのレシートで応募するというキャンペーンにしたのだ。
これだけの顔ぶれを集める大規模なイベントを開くためには、同社が創業以来経験したことがないような費用が必要だった。しかもチケットは販売しない。当然のように大赤字は必至で、経営層からは猛反対されたが、糸数氏はその意義を強調し、何とか説得して実現にこぎつけた。
いざキャンペーンが始まると、今まで利用したことのない人たちも沖縄ファミリーマートに押し寄せた。例えば、子どもたちが親に洗剤やたばこなどの日用品までをすべて沖縄ファミリーマートで買うように頼み、そのレシートをもらってせっせとキャンペーンに応募したのである。
「ファミリーマートのレシートで応募して、それが当選しない限りはチケットが手に入らないわけですが、これはキャンペーンの中身がものすごく魅力的でなければ意味がありません。お金はかかりましたが、前代未聞の大きなチャレンジをすることによって一気に沖縄ファミリーマートの認知度が高まったのです」(糸数氏)
これは単なる認知度アップだけでなく、「ファミマっておもしろいよね」「魅力的なキャンペーンがあるのはいつもファミマだよね」など、人々の中で沖縄ファミリーマートのブランド価値を高め、彼らをファン化させることに大きく寄与したという。
「決して利益が出るものではありませんが、01年以来、ユニークな取り組みを連発することでじわじわとブランド支持率が上がりました。キャンペーンの狙いは商品を買ってもらうことよりも、ファミマが大好きだと思ってもらえるようになることです。特に今の消費者はモノそのものよりも情緒的価値を好む人が増えていますから」(糸数氏)
01年の大規模キャンペーンをきっかけに業績を伸ばし、今では沖縄ファミリーマートは県内で319店舗を展開する最大手に。17年2月期の売上高は709億8100万円(前年同期比19.8%増)と成長を続けている。
その沖縄ファミリーマートが5年前の25周年キャンペーンで実施した企画の1つが、12年7月22日に開催したAKB48 チームKの沖縄公演だった。これは全国ツアー「野中美郷、動く。〜47都道府県で会いましょう〜」の一環として、AKB48グループの沖縄での初コンサートとなった。そしてツアー最多の約1万人を動員したのである。ライブ会場は今回の選抜総選挙と同じく豊崎美らSUNビーチである。
このときにもレシートで当たるキャンペーンを実施。すると10万通を超える応募があったという。「当社にとっても過去2番目に大きなイベントでした」と、沖縄ファミリーマート 広報・マーケティング室の宮里直樹課長は振り返る。このときの成功が、今回の30周年記念キャンペーンにおいてもAKB48グループを起用したいというモチベーションにつながっているのは言うまでもない。
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