業績回復に導いた、オリオンビールの徹底したブランド戦略とは?:海外にも販路拡大(1/3 ページ)
今年に入って初の海外拠点を設立するなど、今では沖縄以外でも手軽に飲めるようになったオリオンビール。売り上げを伸ばし続ける裏側には徹底的なブランド戦略があった。
透き通る海、白い砂浜、どこまでも続く青い空……。「沖縄」と聞くと、多くの人がこうしたイメージを抱くだろう。1年を通して温暖な気候に恵まれる沖縄には、今では国内外から年間で800万人に迫る観光客が訪れている。そのピークはやはり夏だ。
沖縄では夏になると各地の海岸でビーチパーティーが開かれる。老若男女さまざまな人たちが大勢集まり、音楽を流しながらバーベキューしたり、お酒を飲んだりするイベントである。美味しい肉を頬張りながら彼らが手に持つビールは、恐らくほぼ同じメーカーのものではないだろうか。地元・沖縄のビールメーカー、オリオンビールである。
「オリオンビールのブランドは爽快さ。沖縄のイメージそのものを商品に落とし込んでいる」とオリオンビールのマーケティング担当者は語る。現在、オリオンビールの生産量の約8割は沖縄県内で消費されているというように、沖縄の消費者の嗜好やライフスタイルを意識した商品開発を徹底している。
そうした沖縄ブランドへの徹底ぶりが逆に外からの関心を引き、「現地に行かずとも沖縄を味わいたい」というような消費者からのラブコールが長い年月をかけて徐々に増えていったのである。
かつては沖縄以外ではあまり飲むことのできない同社のビールだったが、1990年に首都圏で主力商品の「オリオンドラフトビール」を販売開始。1995年には東京営業所を設立し、地道な営業活動の末、今では首都圏をはじめ沖縄県外でもオリオンドラフトの生ビールを飲める飲食店が増えた。
「東京進出当初は、沖縄からビールを運ぶ運賃コストが問題だったので、ほとんど東京で生ビールを提供していなかった。取り扱う店舗数が増え、ある程度の販売量も見込めるようになったことで東京営業所を立ち上げた」(担当者)
そして、2002年にはアサヒビールと業務提携。缶ビールはアサヒビールの販路を通じてコンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの小売店に卸せるようになったことで一気に販売機会が広がったのである。
また海外にも販路を広げている。輸出先は、台湾、米国、香港、オーストラリア、シンガポール、ロシア、中国、ニュージーランドなど13カ国・地域。特に台湾は食文化や気候が沖縄と似ており、沖縄に来る観光客も多いため、海外の中でも大きな市場に育ちつつあるという。海外出荷量の大半を占めており、2016年2月には初の海外拠点を台湾に開設した。
同社の県内出荷量はビール類全体で5万キロリットルを超える。2016年3月期の売上高は前年同期比10.8%増の256億6300万円、経常利益は同60.9%増の29億1500万円と好調だ。
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