デジタル変革に求められるアナログ力とは?:有識者に聞く(3/4 ページ)
「デジタルトランスフォーメーション」(DX)に成功している企業には、どのような特徴があるのだろうか。また、これからの時代でビジネスパーソンが活躍するためには、どのようなスキルが求められるのだろうか――。ガートナージャパンの有識者を取材した。
歴史は繰り返される
――なぜ今、日本企業にとってデジタル・ビジネスが必要なのでしょうか。
本好: 少し過去の歴史を振り返ってみましょう。今は想像できないかもしれませんが、インターネットが出始めたばかりの2000年前後は、日本企業の名刺にメールアドレスすら書かれていないという時代でした。
こうした中で、楽天がいち早く電子商取引に参入し、「楽天市場」を立ち上げた時に、「電子商取引をやる必要があるのか」という議論がありました。「今まで通りの通販でいいじゃないか」と批判されたのです。
ところが、結局今何が起きているかというと、インターネット通販(EC)が当たり前のように使われていて、ネットで買い物をする人はすごく多いです。逆に、紙ベースの通販にこだわっていた企業は苦戦が続いています。
この現象と同様に、10年後には「デジタル・ビジネスがなぜ必要なのか」という議論はなくなっていて、当たり前のようにテクノロジーを活用したビジネスをする時代になっているでしょう。
そして、「今まで通りでいいじゃないか」と考え、ビジネスを変革しないままでいる企業は淘汰されると予測します。また、良いビジネスアイデアを考案したとしても、実現するのが遅いと、他の企業に先を越されてしまいます。他社にやられる前に考えて、自ら動くことが大切になってきます。
「デジタル・ビジネス」と「電子化」の違いをまずは知るべき
――具体的にどうすれば、日本企業はデジタル・ビジネスを推進できるのでしょうか。
本好: ビジネスパーソンがデジタル・ビジネスについての正しい知識を身に付け、マインドセットを入れ変えることが必要です。
デジタル・ビジネスは、社内の業務を変えることではなく、社外の顧客に提供するサービスを変えることです。ですが、まだ一般的にはデジタル・ビジネスと業務の電子化の区別がついておらず、承認の電子化やペーパーレス化など、社内向けサービスの改善を「デジタル化」と考えているビジネスパーソンも少なからず存在します。
電子化とは、あくまで既存のやり方を改善するだけで、抜本的な改革にはつながりません。一方、デジタル・ビジネスは、これまで述べてきた通り、既存ビジネスとは大きく異なるものです。
また、業務の電子化は、企業の経理部門や販売部門とIT部門が共同で行うものですが、デジタル・ビジネスは事業部門とIT部門が主導して行うもの。関わる部門も違うんです。
鈴木: ただ、実際は、デジタル・ビジネスの現場では、IT部門と業務の協力体制がうまくいかない例も多いです。それぞれ別々の目標に向かって、長い間仕事をしてきた者同士なので、突然「一緒にやりましょう」と命じられても戸惑ってしまうのです。
そこで重要なのが、先ほどの成功例で述べたスモールスタート。両部門から少人数のみを引っ張ってきたチームをまず作る。それからアイデアを出し合ってビジネスのイメージを作り上げ、ある程度イメージが固まってから戦略の策定に移るといいでしょう。
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