訪日外国人がレンタカーで事故りまくっているのは本当か:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
沖縄で外国人観光客によるレンタカー事故が増えている、らしい。現地の琉球新聞がそのように報じたわけだが、関係者に話を聞いたところ、事情はちょっと違うようだ。どういうことかというと……。
記事だけを見ると、読者は誤解する
まず訪日外国人旅行者が急増していることで、レンタカーを利用する外国人が日本中で激増していることは事実だ。全国で、2015年にレンタカーを利用した訪日外国人の数は70万人を超える。この数は2011年の18万人から4倍になっている。
琉球新報の記事によれば、もちろん沖縄でもレンタカー利用者は激増している。2014年に8万5323台だった外国人のレンタカー貸出件数は、2015年に14万3735台になり、2016年にはさらに1.4倍の20万6413件に上った。2014年から2.4倍に増えている。
それに伴って事故数が増えるのは当然だろう。すでに述べた通り、2016年の事故件数は9648件で、2014年の2901件から3倍以上になっている。
筆者の取材に対し、業界関係者は「沖縄でレンタカーを利用する外国人は、その9割が、韓国や台湾、香港からの旅行者で、特に韓国と台湾では国内で走行レーンが右側ということもあり、左側通行の日本で事故を起こす件数が多いのです」と話す。
琉球新報の記事について沖縄県レンタカー協会に問い合わせると、担当者は「死者が出るような重大な事故は1件もない。記事の数字は、ちょっとこすってしまったような、あくまで報告があった事故の件数であり、保険処理をするようなケースの件数はまだこれから出てくるので、実際は記事の数字よりも少なくなる」と答えた。
ただこの記事だけを見ると、読者は誤解してしまう。事実、筆者も最初に記事を読んだ際には、沖縄では訪日外国人旅行者が運転するレンタカーでとんでもない数の交通事故が起きていると驚いたし、今後さらに訪日外国人の運転が増えたら……と先行きが不安になった。しかも全国的にレンタカーの利用が増えていることから、決して対岸の火事ではないとも感じた。
だが実際には、琉球新報の記事にある9648件というのは、いわゆる「交通事故」だけでなく、駐車場から出るのに軽く壁にこすったといったケースも含まれている。記事はその点に言及していないため、ミスリードされた読者も少なくないだろう。
また記事では、「9648件」のすぐ後に(速報値)と書かれている。一般的に速報値というのを見て、この数字が確定したものではないことを理解できる人がどれほどいるのか分からないが、それについての説明がないのは読者に対して不親切だ。
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