ハーバード大学炎上から探る「研究員」の生態:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
ハーバード大学の「研究員」をめぐって、ちょっとした騒ぎになっている。米陸軍時代に米国務省の機密情報である外交公電をリークし、内部告発サイト「ウィキリークス」に公表した人物を招へいしようとしたからだ。そもそも研究員とは何なのか、日本にも話を広げてその実態に迫る。
一連の騒動を受け、さまざまな声
今回、筆者が最初に異変に気が付いたのは、9月15日(現地時間14日)に、ハーバード大学によるネット配信を視聴しようとPCの前に座っていた時だった。その日、CIA(米中央情報局)のマイク・ポンペオ長官が登壇し、セミナーを行うことになっていた。
しばらくして中継が始まり、画面にはステージが映し出され、どんどん聴衆たちが集まる様子も見受けられた。ざわざわとした聴衆の雑談も聞こえる。すると、大学関係者がステージに現れ、皆に静まるようジェスチャーした。そしてかなり聴衆も集まっていのにもかかわらず、イベントの中止を突然告げた。しかも理由は言えないという趣旨の話をしている。いわゆる「ドタキャン」だが、関係者は手短に要点を伝えて謝罪し、ステージから姿を消した。
実は舞台裏では、ハーバードが研究員として受け入れると前日に発表していたマニングの存在が問題になっていたのである。CIAは国家機密をリークした人物を受け入れるような大学で話などすべきではない、と直前になって中止を決定した。後になって、自身もハーバード出身であるポンペオはこうコメントしている。「彼(マニング)が米国を裏切ったことと、そして私自身のCIA職員に対する忠誠心が(中止を決めた)理由である」
確かにマニングは、情報をリークしたことで有罪判決を受け、35年の禁固刑に服していた。だが2017年1月にリークに滅法厳しかったバラク・オバマ前大統領が任期終了前に恩赦を与えたことで、釈放されていた。
マニングは米軍所属という立場を悪用して国家機密を暴露した人物であり、暴露された大量の公電により、例えば米外交官の外国要人に対する「本音」の評価や裏情報などが漏れ、外国における米国務省の活動に支障が出たとも言われる(国防総省の調査では、このリークにより米国人に死者が出るような事件は確認されていないという)。
そんな人物を研究員として招くとはいかがなものか、という声が上がったのも理解できる。ハーバードの公式Facebookはプチ炎上し、「背信者を研究員に? 信じられない」「スパイに研究者ポストを与えるとは恥ずべきこと」など意見が飛び交っている。
その一方で、世界最高峰のハーバードで、生徒に何を教えるのか、または何を伝えるのかについて、権力におもねって判断するなんてけしからん、との指摘もあった。学生などからも、「権力に屈している」「CIAの脅しでマニングを見捨てた」という声が出ていると報じられている。
私立の教育機関であるハーバードで学ぶ人たちの中には、権力から独立した教育を求める声も少なくない。自由闊達(かったつ)な意見や思想の交換を重んじるべき教育機関で、世界中から研究者などが集まるハーバードの方針が、政府の(見えない)圧力に屈することに強いアレルギーを示す人たちもいる。
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