売りまくる営業組織の作り方:成長企業が語る(3/3 ページ)
今や営業に求められる要素は複雑化、高度化していて、いくら有能な営業マンであっても一人で自社の売り上げの大半を稼ぐのはほぼ不可能だ。そこで重要なのが営業組織全体の底上げである。好業績を続けるオープンハウスなどの取り組みを紹介する。
営業リーダーが、今危ない!
セミナーの特別講演では、かつてリクルートやソフトバンクで営業部隊をけん引してきた、東京工業大学大学院特任教授の北澤孝太郎氏が登壇し、これからの営業のあるべき姿について語った。
「今、営業リーダーが危ない」という刺激的なテーマで北澤氏は口火を切った。北澤氏が主催する営業研修などに参加する営業部門の管理職に対して「営業戦略を書いてください」という課題を出すと、決まって以下の3つの回答が出てくるそうだ。
(1)場当たり的: 前年度○○%アップなど、社内での評価しか考えていないもの。
(2)無難: 他社や他部署と似通ったもの。
(3)対症療法的: 原点回帰などその場しのぎのもの。
「こうした戦略を掲げられても、営業メンバーは共感しないし、振り回されて疲弊するだけでしょう。営業現場のリーダーは顧客や自分の部下が共感し、やる気になってもらう、その結果、生産性が上がるようなことをしなければならないのです」と北澤氏は指摘する。
ただし、今の営業リーダーが全面的に悪いというわけではなく、日本企業が置かれた状況の厳しさも無関係ではない。北澤氏は2000年ごろ以降に見られる社会的な変化について触れる。
まずは「成果主義」や「MBO(目標管理)」の導入だ。日本経済の低迷によって企業でのリストラが多発するとともに、社員個々人のパフォーマンスがより厳密に管理されるようになった。また、評価の多くは相対的なものであるため、社員同士の足の引っ張り合いが起き、チームでのコラボレーションが減少した。その結果、組織力が低下したのである。
営業の質も変化。人材リソースが限られるので効率重視の営業スタイルが主流となり、分業が進んだ。それに伴い、組織内の情報が断裂し、1人1人の役割の縮小に拍車がかかった。
さらには1人のリーダーがより多くの部下を管理するという文鎮型の組織になった。ただしリーダー自身にも個人の数値目標が与えられ、プレイングマネジャーとしてフル回転しなければならない。部下を指導する時間がなくなり、人材が育たなくなってしまったのである。
こうした現状の中で、企業は営業をどうやって強化していけばいいのだろう。改めて営業とは何か、その点に北澤氏は言及した。
北澤氏が考える優れた営業マンとは「誰からも、その考え方や活動に強い共感が得られる存在」だということだ。それに加えて、営業とは「顧客価値創造」「マーケティング活動」、そして「セル(モノ売り)ではなくビジネス」ができる人間が望ましいという。
「今こそ営業が取り戻さないとならないものとは何か。それは思いを持ち、それを強くすること、考えること、実践すること、そして営業知識を増やすこと」つまり、「強い思いとリアリティです」と北澤氏は意気込んだ。
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