加速する「AI型店舗」 小売の現場はこう変わる:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
AI時代の到来で小売店も大きく変わろうとしている。AIを活用した次世代型の店舗は、従来の小売店のビジネスをどのように変えるのか。先進企業の事例を紹介しつつ、解説する。
ファミリーマートを運営するユニー・ファミリーマートホールディングスは2017年6月、IT企業であるLINEと業務提携すると発表した。
提携の具体的な内容は明かされていないが、ファミリーマートにおける購買データをLINEが親会社のNAVERと共同開発したAIプラットフォーム「Clova(クローバ)」で分析し、LINEのメッセージング機能を使って最適なクーポンを送付するなど、個人それぞれにカスタマイズされた販促活動を行うものと考えられる。
LINEは同時期に、対話型AIスピーカー「WAVE(ウェーブ)」の販売も開始している。ウェーブもクローバに対応しており、利用者が話しかけると、聞きたい音楽をかけてくれたり、知りたいニュースを読み上げてくれる。LINEでメッセージを送ったり、届いたLINEのメッセージを読み上げることも可能だ。
これはアマゾンが米国などで販売しているAIスピーカー「Amazon Echo(アマゾンエコー)」と同じような製品で、エコーは既に2500万人の利用者が存在する。LINEはアマゾンと異なりネット通販企業ではないので、ウェーブは当面の間、単にラインのメッセージを読み上げたり、天気を知らせてくれる便利なツールにとどまるだろう。
ウェーブ単体では、サービスとしてそれほど大きな意味は持たない。こうした対話型AIはモノやサービスの販売につなげてこそ大きな利益になるので、今回のファミマとLINEの提携には大きな意味がある。例えば、対話型AIスピーカーをうまく活用すれば、朝出勤する前に、今日コンビニで買う商品を顧客に勧めるといったサービスが簡単に実現できる。両社のサービスはAIを軸に融合が進んでいくことになるだろう。
関連記事
- ローソンの「売上高1割アップ」が困難な理由
ローソンが発表した中期経営計画では、各店舗における1日当たりの売上高を1割以上引き上げるという高い目標が掲げられたが、実現はそう容易ではない。ローソンが抱える課題から、コンビニというビジネスの特徴について解説する。 - セブンの「ロイヤリティ引き下げ」が意味するもの
セブン−イレブンが、これまで「聖域」としてきたフランチャイズ(FC)加盟店のロイヤリティ引き下げを表明。コンビニにとって核心部分であるロイヤリティの見直しを実施しなければならないほど、セブンは追い込まれつつあるのかもしれない。 - なぜセブンは海外のコンビニを買うのか
セブン-イレブンがこれまで聖域としてきたFC加盟店のロイヤリティ引き下げに踏み切った。同じタイミングで過去最大規模となる海外のコンビニのM&A(合併・買収)実施についても明らかにしている。飽和市場で苦しくなると言われながらも、何とか成長を維持してきたコンビニ業界だが、一連の決定は成長神話もいよいよ限界に達しつつあることを如実に表している。 - 「営業」の仕事はAIでどう変わるのか
AIの普及によって営業の仕事が大きく変わろうとしている。10年後の社会においてセールスパーソンに求められる能力や評価基準は今とはまったく違ったものになっているはずだ。AI時代に営業のプロとして生き残っていくために必要なスキルとは……。 - 自分の価値を取引する「VALU」の存在価値は?
自分の価値を取引するという新しい概念を提唱した新サービス「VALU(バリュー)」。既に自身を“上場”した人は1万人を超えているそうだが、VALUとはどのようなサービスで、どのような可能性があるのか。改めて整理してみた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.