無資格検査 日産の社長が「謝罪」をしない理由:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
無資格の従業員に「完成検査」をさせていたことが判明した日産自動車が、38車種116万台のリコールの届け出をした。多くのメディアがこの問題を報じているが、筆者の窪田順生氏は同社の「危機管理対応」に注目しているという。どういうことかというと……。
「やっちゃえ」感が強く出ている2つめのポイント
(2)「脱法行為」やリコールの説明を社長ひとりで行う
日産がこの会見を世間に謝罪会見だと受け取られないよう矮小化を目指したのは、ほかのポイントからも明らかだ。
今回の会見では、西川社長がひとりで資料片手に記者会見会場に入って、ひとりで説明をして、ひとりで記者からの質問に答えている。「だからなに?」と思うかもしれないが、大企業の危機管理において、このようなスタイルで謝罪会見にのぞむことは滅多にない。
専門的な質問などが飛んできた際に、社長ひとりですべて答えられるわけがない。ワンマン社長が経営している中小企業では「ピン謝罪会見」もあるが、大企業の場合は担当役員や、専門的な質問に答えられる幹部など3〜4人が登壇をするのが普通だ。例えば、三菱自動車の燃費不正が発覚した際の記者会見でも社長をはじめ担当役員など3人が登壇した。
このような危機管理の基本のキを日産ほどの大企業が理解していないわけがない。ということは、考えられるのはひとつ。あの場に西川社長が定例社長会見のようなノリでフラリとひとりで出てきたのは、「わざと」であり、そこには「記者のみなさんは勘違いしないでね、これは断じて謝罪会見ではありませんよ」という強烈なメッセージがあるのだ。
(3)初動は広報部長による謝罪会見
見てきたポイントからは、「西川社長による謝罪会見」と報道されることを回避することで、無資格検査は「小さな問題」だと印象付けようという日産のイメージ戦略が浮かび上がる。
「そんなのはお前の妄想だ」という人もいるかもしれないが、そう考えてみると、日本中の広報マンたちが首を傾げたあの不可解な初動対応も説明がつく。
この問題を日産が初めて明らかにしたのは9月29日午後7時、国土交通省での緊急会見だった。そこで状況を説明して深々と頭を下げたのは、「グローバルコミュ二ケーション本部ジャパンコミュニケーション部長」と「企画・管理部エキスパートリーダー」という肩書きの方。つまり、部長クラスだった。
これほど大きな不祥事が発覚しているにもかかわらず、部長が謝罪会見をするというケースはあまり聞いたことがない。社長が出ないということはあっても、担当役員などの経営陣が登壇して、広報部長は司会進行を務めることが多い。
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