無資格検査 日産の社長が「謝罪」をしない理由:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
無資格の従業員に「完成検査」をさせていたことが判明した日産自動車が、38車種116万台のリコールの届け出をした。多くのメディアがこの問題を報じているが、筆者の窪田順生氏は同社の「危機管理対応」に注目しているという。どういうことかというと……。
不可解な対応に自動車メディアからも厳しい声
それは緊急会見なんだからしょうがないんじゃない、と擁護する人もいるだろうが、日産湘南工場で国土交通省の抜き打ち検査が行われて発覚したのは9月18日以降。事態を把握して、役員クラスのスケジュールを抑える時間は十分にあった。にもかかわらず、部長クラスが登壇――。この不可解な対応には自動車メディアからも厳しい声があがった。
『仮に会長や社長が出席しないまでも、経営責任のある役員クラスが謝罪し、説明するのは当然のことで、販売店や顧客を軽視していると思われても仕方ないだろう』(レスポンス 10月2日)
おっしゃるとおりだが、筆者は顧客や販売店をバカにしているわけではなく、これも問題の矮小化を目指した日産のしたたかなイメージ戦略ではないかと考えている。
もし担当役員が緊急会見に登壇して頭を下げて詫びれば、次は西川社長を中心とした謝罪会見を催すしかない。このような流れにもっていかれないため、無資格検査とは、安全性に影響を及ばさない「小さな問題」だということを世の中に印象付けるため、部長の謝罪からスタートしたのではないか。
そんなの考えすぎだと思うかもしれないが、実は日産という会社はわりとこういう攻めの危機管理対応をやっている。
それを如実に示すのが、三菱自動車の燃費不正発覚からの日産傘下入りという一連の流れだ。
筆者はかつて『三菱自動車の日産傘下入りが「シナリオ通り」に見えてしまう3つの理由』という記事のなかで、三菱の不正発覚後、就任したばかりの相川哲郎社長が矢面に立たされ、実際に不正が行われていた期間も含めて長く三菱自動車のかじ取りをしていた益子修会長がなかなかマスコミの前に現れなかった理由を、日産との資本提携を見据えて、「三菱再建の顔」としていくためにネガティブイメージをつけないように温存するための戦略ではないかと指摘した。
さらに言ってしまうと「益子会長隠し」の背景には、この時点で資本業務提携が水面下で進められていた日産側の「意向」が強く働いた可能性を示唆したのだ。
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