三菱UFJがベンチャーと「ギブ&テイク」で生み出す価値:フィンテックを課題解決の糸口に(3/4 ページ)
三菱UFJフィナンシャル・グループがベンチャー企業と新事業の創出を目指すプログラム「MUFG Digital アクセラレータ」。ベンチャーが持つ技術とアイデアを重視する背景にある、メガバンクの課題とは……。
中小企業向け融資の問題点に着目
「プログラム開始当初は、まだ会社も設立されていなかったんです」と振り返るのは、第2期に参加した企業「OLTA(オルタ)」のメンターを務めた、三菱東京UFJ銀行法人企画部業務開発グループの歳森凡文氏だ。ビジネスマッチングアプリでメンバーを集めたという変わり種だが、プログラムを経て、資金調達ができるまでに成長したという。
OLTAが着目したのは「中小企業の資金繰り」。会社の規模や売り上げがまだ小さい企業にとっては、事業資金の確保が大きな課題。成長余力はあっても、金融機関からの借り入れが難しいケースも多い。
中小企業の資金調達の幅を広げるために活用しようと考えたのが、「ファクタリング」の手法。商品を販売したがまだ代金を受け取っていない、未回収の売掛金を、ファクタリング会社が資産として買い取るサービスだ。一時的な資金調達手段として利用されているが、中小企業にとっては高額な手数料が負担になるリスクがある。
OLTAは、ファクタリングの業務において、AIを活用した与信審査で与信コストを削減するビジネスモデルを考案。さらに、手続きを全てオンラインで完結できるようにすることで、事務コストを抑える。それによって、手数料を低く設定し、中小企業が利用しやすいようにする。そんなサービスの形を描いている。
三菱東京UFJ銀行がOLTAと手を組んだのは、法人向け融資の部門が抱える課題に合うビジネスプランだったからだ。日銀のマイナス金利政策の影響もあり、融資をしてももうけは少ない。回収の見込みがより高い企業に積極的に貸し出す一方、融資がなかなか受けられず資金繰りに困る中小企業もある。
「中小企業の資金調達手段は、金融機関からの融資に頼っている。金融機関側には、『貸してやっている』という意識が生まれ、大企業を重視する傾向もあった。そのやり方はもう古いのではないか。顧客が資金調達手段を選べるような、新しいサービスが必要」と、歳森氏は力を込める。
プログラムでは、三菱東京UFJ銀行が個別の情報を特定できないように処理した10年分の取引データを提供。そのデータを使って、AIで売掛金の与信審査を行うモデルを開発した。プログラム終了後は、サービス提供に向けて順調に準備を進めているという。
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