ツインバード工業社長、V字回復までの“苦悩”を語る:赤字から躍進へ(1/5 ページ)
ヒット商品を多数生み出し、業績を伸ばしているツインバード工業。しかし、2000年代初期には5期連続赤字の苦境に陥り、会社は倒産寸前だったという。その時、リーダーはどう振る舞ったのか。同社の野水重明社長に聞いた。
新潟発の家電メーカー、ツインバード工業――。「くつ乾燥機」や、360度首が回転する扇風機「PIROUETTE(ピルエット)」など、ユニークな家電を次々と展開し、ここ数年売り上げを伸ばしている(2016年の売り上げは約134億円)。
そんな同社だが、実は2000年代初期は5期連続赤字の苦境に陥り、会社は倒産寸前だったという。どのようにして同社はその苦境を脱したのか。その時、リーダーはどんな決断をしたのか。V字回復の立役者である野水重明社長に話を聞いた。
カリスマ経営の破綻
ツインバード工業は2017年10月、今まで生産していなかった白物家電のシリーズを発表した。新商品は「10分で全工程を終えられるモードを搭載した全自動洗濯機」「冷凍庫がスペースの半分を占める冷蔵庫」だ。
野水社長は、柔和な笑顔で商品の狙いを語った。「現在はモノが余っている時代です。消費者はできるだけ自分のライフスタイルにぴったり合ったモノがほしいと考えます。だから当社は、時間がないから洗濯はスピーディーに、料理も冷凍食品を多用したい、と考えるユーザー向けにこれらを開発しました。当社は『ライフスタイル家電メーカー』なんです」
同社は昭和から平成初期までは、小型家電をとにかく安い価格で提供するビジネスモデルで勝負していた。野水重明社長の父である野水重勝氏がメッキの下請けから発展させ一代で築いた事業であり、読者のなかにも家電量販店で「安い」と手にとったらツインバード製だったという経験をお持ちの方は多いだろう。
しかし、平成に入るとこのビジネスの限界が見え始めた。理由は野水氏が話す通り「モノが余る時代だから安価であっても自分のライフスタイルや価値観に合わないと買ってもらえない」からなのだが、人は簡単に時代の変化に気付き、成功法則を捨てられるほど柔軟ではない。
90年代から業績は漸減、00年代には5期連続赤字を計上。すると、業績好調時は目立たなかったマネジメントの問題も浮き彫りになった。
先代の重勝氏ようなカリスマが率いていた企業は、上から「これをやるぞ!」と号令が出ると一気に動くが、カリスマの賭けが外れると、社員はどうすることもできない。組織では、明文化されていない“もやっとしたルール”こそが恐ろしい。当時の社員は、何かを発案して上に提案する習慣がなく、結局「昭和のスタイル」の商品をつくり続けた。
当時、営業副本部長だった野水重明氏は、そんな状況の中でもがいていた。大学卒業後、銀行に勤務して経営を学び、入社後は大学院で技術を学んで海外勤務し、経験を積んでいた彼には、現状が「待ったなし」に思えていたという。
しかも、彼の心をかきむしるような事態が起きた。
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