採用現場で「AI面接官」は普及するのか:HR Tech最前線(4/4 ページ)
ソフトバンクがエントリーシート(ES)選考にAIを活用するなど、採用業務の自動化が着々と進んでいる――。実は、こうした動きはESだけでなく「人がやるもの」と考えられてきた面接業務にも及んでいる。AI面接官「SHaiN」(シャイン)を開発したタレントアンドアセスメントの山崎社長に話を聞いた。
昔よりも「選び抜く力」が求められるようになった理由
――ESの選考をAIで効率化するなど、選考プロセスを効率化する事例が増えてきました。その背景は何でしょうか。
山崎: 昔と比べて「選び抜く力」が重要視されるようになってきたからです。
これまでは主に、「受験者を集める」「入社させる」という2つが人事業務において評価されており、選び抜く力はあまり重視されていませんでした。昔は、今のように学生全員が希望する企業を自由にエントリーすることができなかったので、そもそも受験者の母数が少なかったからです。
企業は「応募用はがき」を希望の大学だけに送り、その中から内定者を選んでいました。しかし今は、「リクナビ」「マイナビ」などの求人サイトで誰でも簡単にエントリーができます。ダイバシティー(多様性)の流れもあり、企業側も広範囲(さまざまな大学)から学生を採用することが求められています。受験者の母数がかなり増えたわけですから、企業側の、選び抜く力が求められてくる。
最近よく「優秀な学生がいない」という声を企業から聞きますが、それは昔より優秀な学生が減ったのではなく、受験者の母数が多すぎるために、見つけるのが困難になっているからです。
また、面接官の人数には限りがあります。特に人気企業の場合、大量の受験者を面接するわけですから、1人当たりの面接時間は限られてしまいます。しかし、短い時間の面接では、受験者の資質を見抜くことはできませんし、それで合否を決めてしまうのは受験者にとっても不本意ですよね。こうした課題を解決するために、採用業務の自動化が重視されるようになってきたということです。
さらに、コスト(人件費)をできるだけ抑えて生産性を高めなければいけません。受験者が1〜2万人を超えるような企業の場合、面接スタッフを1000人ほど投入していますが、面接をしている時間は本来やるべき仕事もストップしてしまいますので、大きなコストが掛かっています。
――面接の自動化を進めることで、採用担当者はどのような業務により注力できるようになるのでしょうか。
山崎: 煩雑だった業務から解放されることで採用担当者は入社してほしい人を「口説く」ことに時間を使えるようになります。自社の魅力を伝えていくことはAIやロボットには任せられません。受験者とコミュニケーションをとり、入社の動機付けをしていくことが、人事の重要な役割になっていくでしょう。
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