ホイッスルで世界に立ち向かう、「小さな会社」の勝算:来週話題になるハナシ(3/5 ページ)
さまざまなスポーツで使われているホイッスル(笛)は、どこのメーカーがつくっているのかをご存じだろうか。最大手は、英国のアクメ社。豪華客船タイタニックが沈むときに、乗員たちが持っていたのが、アクメ社のホイッスルだ。そんなホイッスル市場に、日本の小さな会社が挑もうとしている。
楽器部品製作で培った技術をホイッスルに応用
そんなホイッスル市場で勝負を始めた小柴製作所は、埼玉県ふじみの市を拠点とする、社員9人の小さな企業である。1980年の創業から金属加工技術を使ってサックスやフルートなどの楽器部品を製作してきた同社は、その卓越した技術をホイッスルに応用して勝負に出ている。
しかし、大手メーカーのアクメ社やフォックス40社とは違い、さまざまなスポーツのホイッスルを製造するのではなく、あくまでラグビー用のホイッスルに絞っている。
なぜラグビーなのか。小柴製作所の小柴四郎氏は、「とにかく楽器作りと、ラグビーというスポーツが好きなんです」とその理由を話す。しかも19年にはラグビーのワールドカップが日本で開催されることもあり、「ラグビーワールドカップが開催される競技場で、このホイッスルの音色を通じて日本の技術力が、ものづくりが、世界中に伝わればと思い立ち上がった」と言う。
同社の強みは、設計や製造工程の細かな違いが音に影響する洋楽器の世界を支えてきた高い技術力だ。金管楽器の管体の製造や、半田付け、研磨技術のレベルが高く、それが楽器そのものの高品質につながり、メイド・イン・ジャパンの高評価に貢献してきた。
これまで、小柴の製品は世界のオーケストラや国際的なコンクールで使われてきた実績もあり、数多くの名だたる演奏家たちから一流の評価も得ている。
その楽器部品製作で培った技術をホイッスルに応用している。ホイッスルは、吹き込まれる息を100%音に変えなければ、より遠くまで大きな音では鳴り響かない。そこで、ボディに隙間ができないよう1つ1つ手作業で組み上げ、さらに半田付けやメッキ加工を施して息漏れを完全にシャットアウトした密閉度の高い構造を実現しているという。そうすれば空気漏れせず、1回で音が満足に出せるのだ。
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