ホイッスルで世界に立ち向かう、「小さな会社」の勝算:来週話題になるハナシ(4/5 ページ)
さまざまなスポーツで使われているホイッスル(笛)は、どこのメーカーがつくっているのかをご存じだろうか。最大手は、英国のアクメ社。豪華客船タイタニックが沈むときに、乗員たちが持っていたのが、アクメ社のホイッスルだ。そんなホイッスル市場に、日本の小さな会社が挑もうとしている。
メイド・イン・ジャパンのクオリティで勝負
すでに説明したように、ホイッスルにはピーのあるタイプとないタイプがあるが、小柴製作所が製造するラグビーホイッスルはピーホイッスルだ。いい音色を生むためには、コルクのボール(ピー)も重要な要素となる。
通常、コルクは多くの穴が空いているために、水分が染み込んで音が出ないなどのトラブルになることもある。同社では、コルクを防水加工することで、この穴を埋め込み、水分を吸収しにくいように仕上げているという。
とはいえ、そんなにコルクの取り扱いが難しいのなら、コルクのないビートホイッスルにすればいいのでは、という指摘もありそうだが、どうもそんな単純な話ではない。
というのも、ラグビーという激しい接触のあるスポーツでは、ホイッスルは単純にプレーを止めるためだけでなく、重傷事故などを未然に防ぐ重大な役割を担っている。「ホイッスルが聞こえない!」という事態は、選手の大ケガに直結する可能性があり、決して起こってはならないのだ。
さらにラグビーでは、高めの音の一本調子ではなく、興奮状態の選手たちの心の奥底に響くような、低めの力強い音色が必要になる。ピーホイッスルは、音に強弱がつけやすく、審判の意志と表現力を伝えやすいため、試合をコントロールしやすいのだという。
また、クリアな響きを実現するために、ホイッスルのボディにもこだわっている。しんちゅうをベースに銅、ニッケル、金(またはクローム)の厚手メッキを施した4層構造の硬質なボディを作りあげ、これによって、品質の劣化が少ないだけでなく、表面も美しい鏡面仕上げになっている。
世界の強力なメーカーたちと対峙するには、こうした細部にまで気を配ったメイド・イン・ジャパンのクオリティで勝負するしかないということだろう。
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