テスラのEVトレーラー コスト削減効果はどのくらい? 試算してみた:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
EVメーカーのテスラがバッテリーで動く大型トレーラーを投入する。ディーゼルエンジンで動く既存車両と比較した場合、EVトレーラーはコストが安いという特徴がある。次世代の大型車両には燃料電池車が最適と言われてきたが、こうした常識も変わってしまう可能性が出てきた。
2200万円の削減は本当か?
テスラのトレーラーの消費電力は1マイル当たり2キロワット以下となっている。トラックの一般的な年間走行距離(年間10万キロと仮定)や国内の電気料金などを考慮すると年間のエネルギーコストは約320万円と推定される。事業者の場合には、電気料金の大幅な割引が適用されるので、200万円程度に抑えることも可能かもしれない。
一方、ディーゼル駆動のトレーラーは、同一条件の場合、年間の燃料代(軽油)が約330万円になる。しかもディーゼル車はEVと比べてエンジンオイルの交換やブレーキのメンテナンスといった維持費用がかさむので、さらにコストが上乗せされる。EVの場合、基本的にエネルギー回生システム(減速時、モーターを発電機として使い制動力を得ると同時に、発電した電気を回収するシステム)が用いられるのでブレーキに対する物理的負担が極めて軽い。全体の部品点数も少なく点検コストを大幅に削減できるだろう。
そうなってくると運用条件にもよるが、EVトレーラーの方が年間150万円〜200万円ほどコストを節約できる可能性が見えてくる。
年間150万円のコスト削減で償却期間を15年とするとトータルのコストは2250万円ほど安くなるので、テスラが主張している2200万円とほぼ一致することになる。テスラの削減額については詳細情報が開示されていないため、これ以上の比較は難しい。だが、2200万円の削減というテスラ側の説明もあながちウソではないようだ。
EVトレーラーの航続距離や充電設備の普及を考えた場合、長距離輸送に用いるのは少々難しいだろう。だが、関東圏内や東京〜名古屋間といったレベルなら十分に使えそうである。一定のエリア内での運用に限定されるとしても、低コストの魅力は大きい。
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