テスラのEVトレーラー コスト削減効果はどのくらい? 試算してみた:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
EVメーカーのテスラがバッテリーで動く大型トレーラーを投入する。ディーゼルエンジンで動く既存車両と比較した場合、EVトレーラーはコストが安いという特徴がある。次世代の大型車両には燃料電池車が最適と言われてきたが、こうした常識も変わってしまう可能性が出てきた。
日本のEV化はトラックから始まる?
EVはもともと自動運転との親和性が高いとされているが、EVトラックと自動運転の親和性はさらに高い。自動運転化されたトラックであれば、高速道路を一定の車間で車列を形成しながら運転できるので、運送効率が極めて高くなる。ドライバーの過重労働の心配もないため事業者にとってはさらに魅力的だ。
EVトラックの登場は、自動運転システムの普及に弾みをつけることになるだろう。またEVの場合には騒音問題を軽減することができるため、深夜運用のハードルも下がる。
テスラはシリコンバレーの企業であり、カリフォルニアは米国で最も環境問題への関心が高い州の1つである。テスラとしてはお膝元である同州での普及を目指し、戦略的なEVトラックを投入したものと思われる。一方、日本はあまりEVに積極的とはいえず、EV化については各国よりもペースが遅くなる可能性が指摘されている。
だがトラック輸送に関しては話は別かもしれない。日本の運送業界は世界でもまれに見る低収益にあえいでおり、1円でもコストを安くしたいというのが現実である。もしかすると日本は、EVトラックの導入に対して最も積極的な国になるかもしれない。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
関連記事
- トヨタが販売車種を半数に絞る理由
トヨタ自動車が、国内で販売する車種を半分に削減する方針を固めた。同時に地域別の販売戦略を担当する新しい部署も立ち上げる。トップメーカーであるトヨタは戦後、一貫してフルラインアップの製品戦略を進めてきたが、今回の改革は、同社にとって極めて大きな転換点となる。 - 欧州で加速するEVシフト トヨタへの影響は?
スウェーデンの自動車メーカー、ボルボが内燃機関のみで走行する自動車の生産を段階的に廃止する計画を明らかにした。ほぼ同じタイミングで仏国のマクロン政権が2040年までに、内燃機関を搭載した自動車の販売を禁止する方針を表明している。欧州を震源地にEVへのシフトが一気に進む可能性が出てきた。 - 三菱UFJ「約1万人削減」 銀行員受難の時代がくる
銀行員が再び受難の時代を迎えようとしている。各行は低金利による収益低下とフィンテックの普及(異業種の参入)という2つの課題に直面しており、大幅なコスト削減が必至の状況だ。銀行業界は近い将来、大量の人員削減を余儀なくされる可能性が高いだろう。 - 「AIアナウンサー」年間1000円の衝撃
エフエム和歌山が「ナナコ」と名付けたAIアナウンサーの運用を始めている。年間で掛かる費用は1000円程度だという。さまざまなAI機能が安価で簡単に買える時代、ビジネスの現場では何が起こるのか。 - 将来稼ぐ力を予測する「AI融資」の狙いとは
ソフトバンクとみずほ銀行が、AIを活用した個人向けの融資サービス「AIスコア・レンディング」を展開している。同サービスでは、AIが利用者の「将来稼ぐ力」を分析し、適切な金利を決めているという。その狙いとは……。 - 吉田茂の愛車も登場! 名車の祭典「AUTOMOBILE COUNCIL 2016」開幕(写真34枚)
名車の祭典「AUTOMOBILE COUNCIL 2016」の様子を写真でお伝えする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.