仙台育英野球部の名将、佐々木監督の辞任にOBたちは……:「いい親父」と慕われた名将
高校野球の強豪、仙台育英学園高の佐々木順一朗氏が野球部監督を辞任。突然の発表に、野球部のOBたちからは戸惑いの声も……。
仙台育英学園高校(仙台市)は12月10日、今夏の甲子園で8強入りした硬式野球部の部員が飲酒・喫煙をしていた問題を受け、監督を務める佐々木順一朗氏が来年1月1日付けで辞任すると発表した。
同校の調査によると、飲酒・喫煙は今年3〜11月に居酒屋や野球部の寮などで計8件あり、ベンチ入りメンバーを含む9人が関わったという。野球部は1月9日まで活動を自粛する。
名将の辞任に野球部のOBたちは……
佐々木氏は、1995年に監督に就任。春夏通算で19回甲子園に導き、2001年春と15年夏では準優勝も果たした。選手育成にも定評があり、佐藤由規(東京ヤクルトスワローズ)、橋本到(読売ジャイアンツ)、上林誠知(福岡ソフトバンクホークス)――など数多くのプロ選手を輩出した。
佐々木氏は、選手たちの「自主性」を重視した独自のマネジメントで強いチーム作りを実践してきた。試合をするとき以外は、部員から選ばれた助監督に練習メニューの考案を含む現場の指揮を任せた。部員は100人を超えているが、全員が走塁コーチ、ピッチングコーチ、グラウンド整備責任者――など、必ず何かの責任者に就く。
以前は佐々木氏が前面に出て指揮を取っていたという。しかし「“俺についてこい”というスタンスでは、組織はまとまらず、むしろ不満が生まれてくる」(佐々木氏)という自身の経験から、できるだけ選手主導のチーム運営を意識してきた。部員自身に「組織の一員としてどう貢献していくのか」を考えさせることによって、結束力を高めていく狙いがあったという。
また、グラウンドの外では、部員たちが5〜6人単位でチームを組み、研究(テーマは自由)したことを発表し合う“勉強会”も定期的に実施。グラウンド上では距離が開きがちな「ベンチ入りメンバー」と「メンバー外」が共同作業を通じてコミュニケーションを取ることにより、一体感を高めていく仕掛け作りにも取り組んでいた。
「結果」ではなく、チームの「雰囲気」を重視してきた佐々木氏のマネジメントは、選手たちからも高く評価されており、卒業後も近況報告のためにグランドに訪れるOBは少なくない。
「監督」ではなく「いい親父」と、慕われてきた名将の突然の辞任発表。取材に対し、野球部のOBたちは「こんな形で終わるなんて、非常に残念」「トップが責任を取るのは仕方ないが、辞任がチームにとっては良いとは思えない」――などと答えている。著者も同野球部OBの1人なのだが、たとえベンチに入れなくても部員全員が「最高の3年間だった」と納得できる環境をつくる良い指導者だっただけに残念でならない。
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