JR西日本、東急電鉄の事故から私たちが学ぶこと:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)
JR西日本の新幹線車両台車破損、東急電鉄のケーブル火災から私たちが参考にできることもある。クルマの運行前点検とタコ足配線の見直しをした者だけが石を投げなさい。
あなたはクルマを点検していますか
JR西日本の運行前検査の体制、異常察知時の対処は問題がある。しかし私はJR西日本を一方的に責められない。皆さんはどうか。特にドライバーの皆さん。
自動車を運転する前に、運行前点検をしっかりやっていますか?
私はやっていない。車検任せ。あるいは故障して初めて修理に出す。エンジンオイルの交換頻度も少なく、必要な量や費用を覚えていないほどだ。道路運送車両法第47条の2は、「自動車の使用者は、自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期に」点検せよと定められている。マイカーの場合は適切な時期にという曖昧な表現だけど、事業用車や8トン以上のクルマは1日1回、運行開始前の点検が必要だ。
以前、私が所有していたクルマでこんな経験をした。正規ディーラーで車検に出したところ、サスペンションの一部に亀裂が見つかったという。新車で買ってから10年以上たち、部品の取り寄せに時間がかかるだろうなと思ったら、すでに取り寄せてあった。自分では点検できないところだし、どうも怪しい。点検の予約時に、もともと結果にかかわらず交換するつもりだったのではないか、という疑念もあった。しかし、よくよく考えれば、同じ車種で同様の事例があり、情報を共有した結果だろう。
点検は大事だし、異臭や異音があったらクルマの使用を停止して点検すべきだ。センサーだけではなく五感も信じろ。現在のところ、JR西日本の新幹線事故からは、この教訓を得られた。人間の五感を侮ってはいけない。
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