社長が語る 「いきなり!ステーキ」の“原点”とは:夏目の「経営者伝」(3/5 ページ)
2013年に銀座に1号店を出店し、2017年には187店舗を出店した「いきなり!ステーキ」――。創業者はペッパーフードサービスの一瀬邦夫社長だ。東証一部上場も果たし、店は有名になったものの、彼が熱血漢・人情の男であることはあまり知られていない。彼の成功法則について、2回に分けてお伝えする。
妻との思い出
「ある日スナックで酔っていると、私の行き付けをどうやって知ったのか、バッチリ化粧をした妻が店に来て、僕の隣に座るから驚きましたよ。しかも、彼女は怒るのでなく『私が綺麗にしてないから外で遊ぶんだよね?』と謝るんです。これで目が覚めないわけないじゃないですか」
余談だが、この奥さんの話には続きがある。
「40代の時には、飲食コンサルタントの先生に『奥様を店のスタッフから外すべき』と言われました。数店舗の経営であれば妻に頼ってもいい。でも『会社を大きくしたいなら社員教育も経理もプロの意見を聞くべきです。しかしそんな時、たいていは奥様が、今のままでいいじゃない、と反対し始めます』と仰るのです。そこで私が言われた通り妻を外すと、彼女はそれ以来、毎晩どこかへ出掛けるようになりました。知人に聞くと、なぜか銀座のすし屋さんで働いているらしい。
私は夜、すし屋さんに妻を迎えに行き、理由を聞きました。すると妻は、『あなた、おすしはいいよ。肉と違って、熱々でなくていいから調理が難しくない』と言うんです。妻は、店を外されても私の店のことが気になって、飲食の仕事を学ぼうと外に働きに出たんですよ。彼女の強い想いを知り、私はすぐ『申し訳ない!』と謝り、翌日から店に復帰してもらいました。
そんな妻が病魔に勝てず世を去ったのは、彼女が49歳の時でした。葬儀店の方が、妻を入れたかんおけを持って行ってしまう。私は『連れて行かないでくれ!』とすがりました」
彼は「ああ、なぜもっと優しくしておかなかったんだろうと思いましたよ」と目を真っ赤にするのだった。
関連記事
- サイバーエージェント社長が明かす「新規事業論」
自ら事業を立ち上げ、会社を成長させていく起業家たち――。本連載では、そんな起業家たちの経営哲学に迫る。今回登場するのは、サイバーエージェントの創業社長、藤田晋氏だ。 - 藤田社長が「AbemaTV」に“ムキになる”理由
サイバーエージェントの藤田晋社長は、なぜ「AbemaTV」を立ち上げたのか。何を目指しているのか。前回に続いて、藤田社長の経営哲学に迫っていく。 - サイバーエージェント社長が実践する「強い組織」の作り方
サイバーエージェント、藤田晋社長の経営哲学に迫る連載。最終回は「組織作り」「マネジメント」を中心にお伝えする。藤田社長が子会社の経営を若手社員に任せる理由とは? - マクロミルをつくった“妄想家”の軌跡
自ら事業を立ち上げ、会社を成長させていく起業家たち。彼らはどのように困難を乗り越え、成功を手にしたのか。経済ジャーナリストの夏目幸明氏がその軌跡を追いかける。第1回はマクロミルの創業者、杉本哲哉氏の創業エピソードをお伝えする。 - 組織を引っ張るためには「夢を語るしかない」
自ら事業を立ち上げ、会社を成長させていく起業家たち。彼らはどのように困難を乗り越え、成功を手にしたのか。前回に引き続き、経済ジャーナリストの夏目幸明氏がマクロミルの創業者、杉本哲哉氏のエピソードをお伝えする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.