「ガキ使」を批判する人が増えれば、トンデモ権力者が生まれる論理:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
大晦日に放送された「ガキ使」が炎上している。ダウンタウンの浜田氏が黒人俳優エディ・マーフィの真似をして顔を黒くメークしたことに対し、批判が集まっているのだ。黒人メークを否応なしに批判することで、筆者の山田氏は「トンデモ権力者が生まれるかもしれない」という。どういうことかというと……。
トンデモ指導者が誕生する日
大統領選当時、メディアはトランプ支持者たちを多数インタビューしている。米公共放送PBSで「トランプは人の気分を害することに恐れていない」と若者が取材に述べていたり(参照リンク)、トランプのポリコレを意識しない姿勢を支持することは「文化的な反発だ」という意見もあった。米調査会社モーニング・コンサルトの調査では、トランプに投票した人の6割以上がトランプの「ポリコレ」は「ほぼ正常」だと答えている。
米国を見れば、確かにポリコレを意識するあまり、白人差別まで生まれているとの指摘もある。例えば17年10月に米コンサル企業アーンスト・アンド・ヤングが実施した職場での意識調査をみると、「(職場で)白人男性の49%が社員の多様化を重視する流れから排除されている」という結果が出て、米ワシントンポスト紙などで話題になった。ポリコレで人種や女性への待遇を意識するあまり、白人男性が疎外されていると感じているという。
「ガキ使」に話を戻すと、今回の黒人メークを批判する声は正論だし、米国を中心とする欧米ではその声のほうが受け入れられるだろう。だからこそ世界的なメディアがこのネタに飛びついた。だが日本ではそんな声に、違和感を持っている人が多いのはないだろうか。
ポリコレばかりを強調する声が大きくなって、それを芸人や制作側が意識しすぎれば、今私たちが楽しんでいるお笑い番組は遅から早かれ消滅するだろう。ただそうなると、その傾向に不満を抱く人たちが、米国のようにポリコレを無視するトンデモ指導者を支持する日も来るかもしれない。
「ガキ使」や「みなおか」批判がどんどん強まれば、日本でも「トランプ大統領」が登場する日が来るかもしれない。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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