いつもと違うぞ!? 年末商戦でエプソンが見せた「新手」:事業転換の表れ(1/3 ページ)
セイコーエプソンは、2017年の年末商戦で、プリンタのインクカートリッジモデルの主力製品に関するテレビCMを一切行わなかった。そのわけというのは……。
セイコーエプソンは、2017年の年末商戦で、プリンタのインクカートリッジモデルの主力製品に関するテレビCMを一切行わなかった。その代わりに流したのは、エコタンクモデルのテレビCM。最大の商戦期におけるこの一手は、エプソンのプリンタ事業の転換を強く印象付けるものになった。エプソンの狙いはどこにあるのか。そして、その成果はどうだったのか。
「自虐的」なCMの狙い
年末恒例となっているエプソンのプリンタ新製品のテレビCMは、例年とは雰囲気が大きく変わっていた。
例年ならば、晴れ着を着たイメージキャラクターが、年賀状印刷を目的にした新製品訴求を行っていたが、今年は主力となるインクカートリッジモデル「EP-880Aシリーズ」のテレビCMは一切行わず、年賀状印刷に関するテレビCMは、ハガキプリンタ製品でわずかに見られただけだった。
一方、最もテレビCMを展開したのは、今年、ラインアップを強化したエコタンクモデルだった。2017年のエコタンクモデルではコンシューマー領域での利用を狙い、フォトクオリティを高めた製品を投入するなど、性能を強化するとともに、ラインアップを増やしている。それに合わせて、エコタンクモデルのプリンタを徹底的に訴求したのだ。
エコタンクは、A4サイズで約5000ページのプリントが可能な大容量インクタンクを搭載した製品で、インク交換が不要な点が特徴。計算上は、月400ページを印刷しても、1年間はインク交換が不要だ。また、A4カラー印刷では1枚あたり1.3円、A4モノクロ印刷では0.5円という低コスト印刷が可能である点も大きな魅力。既存のカートリッジモデルでは、それぞれ13.5円、4.1円であるのと比べると、大幅に安いのが分かる。
エコタンクのテレビCMでは、女優の吉田羊さんが登場し、インクがしょっちゅう切れると感じている人が88%に達していることや、インク代が高いと感じている人が98%にも達している調査データを紹介。これらの不満を解決するのがエコタンクであることを訴求してみせた。この「自虐的」とも言えるテレビCMが印象に残っている読者も多いだろう。
裏を返せば、これまでのインクカートリッジモデルを否定するテレビCMが放映されていたわけだ。セイコーエプソンの碓井稔社長は、「確かに、これだけを見ると、インクカートリッジモデルを否定したテレビCMに捉えられるかもしれない」と認めながらも、「これは、印刷枚数が多い人に対する最適な製品の提案であり、カートリッジモデルとは異なる、もう1つの軸を示したものだ」とする。
続けて、「印刷枚数がそれほど多くない人であれば、カートリッジモデルの方が適している。カートリッジモデルを提供していく姿勢は変わらない」と強調する。
実際、インクカートリッジモデルの製品ラインアップ数は基本的には減らしていない。碓井社長は、「カートリッジモデルからエコタンクへの置き換えではなく、カートリッジモデルに不満がある人に対して新たな製品軸として提案するのがエコタンク」と話す。
このようにインクカートリッジモデル+エコタンクモデルという提案が、エプソンの17年の年末商戦での基本姿勢だったのだ。
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