エプソン、国内プリンタ事業拡大へ大勝負:初の日本専用モデル投入(1/6 ページ)
セイコーエプソンおよびエプソン販売が、大容量インクタンクを搭載した新製品を投入する。初の日本市場専用モデルということで、同社にとっては国内プリンタ事業の転換に大きな一歩を踏み出すものになるはずだ。
セイコーエプソンおよびエプソン販売が、大容量インクタンクを搭載した新製品を3月2日から発売する。
発売するのは、エコタンク搭載モデルの「EW-M770T」。初めて日本市場専用に開発した大容量インクタンクモデルであり、従来のインクカートリッジで収益を得るビジネスモデルとは異なる仕組みを採用したものだ。エプソンにとっては、国内におけるプリンタ事業の転換に大きな一歩を踏み出すものになると言えよう。
驚きの反撃策
エプソンの大容量インクタンクモデルは、2010年10月に、インドネシア市場に投入した「L100」および「L200」が最初だ。
かつては、インドネシアでも、日本と同じようにプリンタ本体を低価格で発売し、インクカートリッジで収益を獲得するというビジネスモデルで展開。日本よりも安い50ドル前後の低価格製品が主力となっていた。
ところが、サードパーティの互換インクの利用が主流となっているばかりか、エプソンのプリンタを改造し、独自に大容量のインクタンクを取り付けて再販するというビジネスが広がり、インクで稼ぐという仕組みでは収益が確保できないという状態に陥っていた。特に、エプソンのプリンタの場合、独自のマイクロピエゾ技術を採用し、これが耐久性の面で高い評価を得ていたことから、大容量インクタンクを取り付けて再販するというビジネスには格好の製品になっていたのだ。
そうした状況を見かねたエプソンが決断した一手は、自ら、再販業者をまねて、大容量インクタンクモデルを発売するという驚きの反撃策だった。価格は従来モデルに比べて約2.5倍となったが、プリントコストの低減、連続大量印刷の実現のほか、インク交換回数が少ない、インクカートリッジの管理コストが不要になるといったメリットが受け入れられ、徐々に販売台数が拡大。とくに、粗悪な互換インクが多かったインドネシア市場において、純正インクに対する品質の安心感が、逆に人気の要因となったのだ。
2010年度にはインドネシアのほか、タイなど4カ国に展開。これが、2011年度には約30カ国、2012年度には約90カ国にまで拡大。それまでは新興国だけの展開であったものが、2014年度からは、ドイツや英国などの先進国にも展開。現在では、全世界150カ国以上で、大容量インクタンクモデルを販売している。
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