いつもと違うぞ!? 年末商戦でエプソンが見せた「新手」:事業転換の表れ(3/3 ページ)
セイコーエプソンは、2017年の年末商戦で、プリンタのインクカートリッジモデルの主力製品に関するテレビCMを一切行わなかった。そのわけというのは……。
年末商戦の結果は?
では、年末商戦ではどんな結果が出たのだろうか。
量販店のPOSデータを集計している「BCN」によると、17年11月〜12月の週次データで、エプソンのカートリッジモデルは40%台中盤のシェアで推移し、トップシェアを獲得。次いで、キヤノンが僅差で追い、ブラザーが8%前後のシェアで推移するというほぼ例年の形だ。これに対して、エプソンのエコタンクは3%前後となっている。第4極の位置にはあるが、このシェアではやや迫力不足であると言わざるを得ない。
だが、角度を変えてみると、エコタンクモデルの存在感が出てくる。
エコタンクの3%前後のシェアは販売台数べースのものであり、これを販売金額ベースにするとシェアは当然のことながら、3倍程度に上昇するのだ。エコタンクの本体金額は、平均単価で4万4800円と、プリンタ市場全体平均の1万5900円の約3倍となっていることが、販売金額でのシェア拡大に影響しているというわけだ。
特に、付加価値モデルの売れ行きが先行する年末商戦の前期には、大きな存在感があった。例えば、11月20日〜26日の集計では、エプソンのエコタンクの販売金額シェアは9.4%に上昇。ブラザーの9.3%を上回り、瞬間風速であるが、第3位のポジションを獲得したのだ。
エコタンクモデルは、日本においては、まだ緒についたばかりだが、エプソンのプリンタ事業にとっては、既に「成長ドライバー」(碓井社長)と位置付けられている。
本コラムでも以前紹介したが、エプソンは新興国を中心にエコタンクで大規模なビジネスを展開している。そして、それが好調な売れ行きをみせている。
17年度のエコタンクの出荷計画は、当初、年間730万台としていたが、7月にはこれを740万台に上昇修正し、10月にはさらに780万台以上とした。そのうち、新興国市場では700万台以上を占めるという。
そして、エコタンクモデルの構成比は、エプソンが出荷するプリンタの45%以上を占め、この勢いが続けば、18年度には過半数をエコタンクモデルが占めることになる。碓井社長も、「18年度はエコタンクモデルで2割増を目指す」と意気込む。
新興国での事業拡大だけでなく、日本やドイツなどの先進国でもエコタンクモデルの販売台数は増加傾向にあることが成長理由となっている。
18年はエコタンクモデルの存在感がさらに高まる1年になるのは間違いなさそうだ。
著者プロフィール
大河原克行(おおかわら かつゆき)
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、25年以上にわたり、IT産業、電機業界を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、ビジネス誌、Web媒体などで活躍。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、AVWatch、クラウドWatch、家電Watch(以上、インプレス)、日経トレンディネット(日経BP社)、ASCII.jp(KADOKAWA)、ZDNet(朝日インタラクティブ)などで連載記事を執筆。夕刊フジでは「まだまだスゴい家電の世界」、中日新聞では「デジモノがたり」を連載中。著書に、「松下からパナソニックへ 世界で戦うブランド戦略」(KADOKAWA)、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「図解 ビッグデータ早わかり」(KADOKAWA)などがある。近著は、「究め極めた『省・小・精』が未来を拓く――技術で驚きと感動をつくるエプソンブランド40年のあゆみ」(ダイヤモンド社)。
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