映画に演劇も 2018年期待の鉄道エンターテインメント:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)
新年の鉄道を俯瞰する「おせち記事」のなかで、見落とされている分野がエンターテインメント。実は今年、鉄道をテーマにした映画や演劇が豊作の予感だ。
『泳ぎすぎた夜』
――青森県弘前市でオールロケ、弘南鉄道が登場。18年春公開予定。(公式サイト)
鉄道が主な舞台ではないけれども、弘南鉄道車内や、弘南鉄道大鰐線松木平駅で撮影された映画だ。弘南鉄道の公式サイトで先行上映会の告知があった。青森県日仏協会創立30周年記念事業として制作された。その趣旨に沿うように、監督は日本の五十嵐耕平さん、フランスのダミアン・マニヴェルさんが共同で手掛けた。1月27日に弘前大学で特別先行上映会が開催される。春から東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムなどで全国公開される。
6歳の少年が魚市場で働く父に絵を届けるという物語。ネットで公開されている予告編では、雪深い道を歩き、1人で電車に乗る姿が描かれている。小学校1年生が通学路を離れるという大冒険。初めてのおつかいを連想するけれど、どんな展開になるのだろう。すでに完成しており、第74回ヴェネツィア国際映画祭・オリゾンティ(革新的、かつ斬新な作品)部門に出品されたほか、第18回東京フィルメックスでは学生審査員賞を受賞している。
鉄道が主役とはいえなくても、こうした映画作品に登場し、観光人気が盛り上がる事例は多い。08年の中国映画『狙った恋の落とし方。』がきっかけで、JR釧網本線北浜駅に大勢の中国人観光客が訪れているし、16年のアニメ映画『君の名は。』に登場する駅に似ているとして、秋田内陸縦貫鉄道が聖地巡礼の対象になった。11年の『ハナばあちゃん!! 〜わたしのヤマのカミサマ〜』の撮影で使われた小坂鉄道廃線跡のレールバイクは、その後に観光施設として正式にサービスを開始している。
『泳ぎすぎた夜』で、弘南鉄道が盛り上がるかもしれない。
関連記事
- 2018年、鉄道の営業力が試される
「企業として、需要があるところに供給する。そういう当たり前のことを、鉄道事業者はやってこなかったのではないか」。つい先日、ある第三セクター鉄道の社長さんに聞いた言葉だ。小林一三イズムが落ち着き、人口が減少傾向にある中で、鉄道の営業努力が試される。2018年は、そんな時代になると思う。 - 宇都宮LRTの目玉は何か、不安は何か
宇都宮市と芳賀町が計画しているLRT事業が、2022年に開業する。軽鉄道(路面電車など)が走行すれば、街はどのように変化するのだろうか。宇都宮市の吉田信博副市長に話を聞いた。 - 漫画『カレチ』『エンジニール 鉄道に挑んだ男たち』が描く、国鉄マンの仕事と人生
国鉄末期の旅客専務車掌を主人公に、当時の鉄道風景と鉄道員の人情を描いた漫画『カレチ』。その作者の池田邦彦氏に、鉄道員という仕事について話を聞いた。 - JR九州が発表した「全路線の通信簿」から見えること
JR九州が2016年度の路線・区間別の平均通過人員を発表した。いわば路線の通信簿だ。JR九州発足時のデータも併せて比較できるようにしている。JR九州の意図は廃線論議ではなく「現状を知ってほしい」だろう。この数値から読み取れる現状とは何か。 - 西武鉄道の銀河鉄道999プロジェクトに「原作愛」はあるか
アニメ大好きな西武鉄道が、また新しいプロジェクトを立ち上げた。しかし今回は主役ではなく参加者側。「銀河鉄道999 現実化プロジェクト」という大きな枠組みの中で、鉄道現業部門として参画する。夢は大きく広がるけれど、原作ファンとしては心配なところもある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.