映画に演劇も 2018年期待の鉄道エンターテインメント:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)
新年の鉄道を俯瞰する「おせち記事」のなかで、見落とされている分野がエンターテインメント。実は今年、鉄道をテーマにした映画や演劇が豊作の予感だ。
『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』
――『銀河鉄道999』40周年記念で舞台化。18年6月に東京公演、7月に北九州・大阪公演。(公式サイト)
アニメの世代である鉄道ファンには説明不要なコンテンツ。松本零士さん原作の漫画は1977年に週刊少年キングで連載開始。翌年からテレビシリーズ化。その翌年に劇場版が公開された。また、舞台作品としては松竹歌劇団によるミュージカル作品などがある。2017年は漫画連載開始から40年。18年はアニメ化から40年。今作はこの40周年を記念した舞台化作品となる。
原作・総監修を松本零士さん自身が担当する。物語は劇場版第1作をアレンジしたという。生命体も含めてあらゆるものが機械化された時代に、生身の人間の少年、鉄郎が謎の美女メーテルとともに銀河鉄道で旅に出る。目的地は機械の身体をタダでくれる星。鉄郎役はミュージカル界のトップスター中川晃教さん。メーテル役はミュージシャンであり舞台女優でもあるハルカさん。他のキャストも音楽、舞台経験者の精鋭を集めた。
ガラスのクレア役の美山加恋さんは、どんな衣装になるだろう。物語だけではなく、舞台演出や衣装も気になる。演劇通をうならせる仕掛けがありそうだ。
『銚電スリーナイン 〜Return to the Roots〜』
――シアターキューブリックのローカル線演劇が再び! 18年7月中旬〜下旬公演。(公式サイト)
同じスリーナインでも、シアターキューブリックのスリーナインといえば、同劇団が手掛ける「ローカル線演劇」のシリーズ名だ。鉄道を舞台にした作品であり、列車そのものを舞台、劇場にした作品でもある。貸し切り車両を走らせ、その車内で公演する。役者も観客も同じ車両に乗り合わせるから臨場感があり、映画の4DXよりも強烈に世界観を共有できる。自分が観客でありつつ、物語のエキストラとして参加している感覚もある。
スリーナインシリーズは04年の『エノデン・スリーナイン』から始まった。しかしこの作品はまだ舞台演劇だった。車内を舞台にした作品は08年の『銚電スリーナイン』から。その後、09年も銚子電鉄、14年は樽見鉄道、15年は高松琴平電気鉄道とひたちなか海浜鉄道、16年にひたちなか海浜鉄道で公演してきた。車内演劇スタイルは10周年。本作の舞台には第1作の銚子電鉄を選んだ。
主人公は公演する鉄道沿線にゆかりのある人物という設定で、せりふには沿線の人々にはおなじみの土地や食べ物などの名前が出てくる。濃密なローカル感で、極め付きは沿線の町歩き。登場人物やスタッフによって、登場人物が暮らす街を案内してもらえる。その知識があれば、地元の人以外でも物語に没入できる。
公演する地域に密着し、ダイヤに合わせた演出が行われる。登場人物が途中の駅で降りて消えたり、新たに駅から乗ってきたりする。役者がダイヤグラムに沿って動くという面白さ。樽見鉄道ではトンネル内の闇を使った演出もあったという。
「ローカル線演劇」の面白さにハマったら、各地の公演を追いかけたくなる。ファン待望の銚子電鉄公演がいまから楽しみだ。
今回は映画を3作品、演劇を2作品紹介した。これだけでも18年は鉄道エンターテインメントが豊作の予感。昨年紹介した『エンジニール 鉄道に挑んだ男たち』などコミック作品もあるし、テレビドラマでは1月15日スタートのフジテレビ『海月姫』で、鉄道ファンの松井玲奈さんが鉄子役で出演するとのこと。18年も楽しい年になりそうだ。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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