「男が自分のために買う」 変化するバレンタイン市場:多様化するニーズをつかめるか
「他人用でなく自分用も買いたい」「大切な人に感謝を伝えたい」――。多様化するバレンタイン市場のニーズをとらえるため、各社は知恵を絞っている。
バレンタインはもともと、思いを寄せる男性に対して女性がチョコレートを贈るイベントというイメージが強い。だが、近年は多様なニーズを盛り込む形で、バレンタイン市場が大きく変化してきている。
まず、市場規模の推移をみてみよう。調査会社インテージが1月30日に発表したデータによると、チョコレートの市場規模は2012年から右肩上がりで増えており、16年度には289億円に達した。また、1年のうちでチョコレートが最も売れるのは2月であり、販売金額ベースで年平均の約1.6倍となっている。チョコレートの売り上げでみると、バレンタイン市場は拡大していると推測してもいいだろう。
「愛の告白」需要は少ない
気になる異性に対して、女性がチョコレートを贈る。この考えが少数派というデータがある。
インテージの調査によると、今年のバレンタインにチョコレートを贈る予定があると回答した女性は7割強にのぼる。贈る相手は、配偶者がトップで39.1%。以下、子どもが23.3%、自分自身が22.8%、親が16.9%、友人・知人が15.3%と続く。恋人に贈る人の割合は10.5%、片思いをしている人・気になっている人に対しては1.8%にとどまる(複数回答)。
小売りの現場からも、データを裏付ける声が出ている。イトーヨーカドーの担当者によると、チョコレートを贈る相手や目的が多様化しているという。こうした変化に対応するため、チョコレートのアイテム数を昨年の約600から、今年は約680に増やした。その他の小売り各社も「家族用」「友達用」「自分用」などきめ細かいラインアップをそろえており、幅広いニーズが存在することがうかがえる。
ちなみに、女性が自分や家族のために買うだけでなく、男性が自分用に買うニーズも増えていると同社は分析する。そこで、男性向けとして、車の形をしたものや、ネジ・スパナの形のチョコレートを今年になって新たに投入している。
プロテインとバレンタイン?
ニーズの多様化を踏まえ、チョコレートとは直接関係ない企業も、バレンタインに商機を見出している。
スポーツ用品大手のゼビオは2月6日から“プロテイン・バレンタイン”というイベントを仕掛けた。例年、バレンタインに関する販促は行っているが、プロテインに焦点を当てるイベントは初めてという。健康志向が高まるなか、恋人や家族などにチョコレート風味のプロテインを贈ろうという提案だ。プロテインは近年、種類も売り上げも増えているなかで、「大切な人の健康を気遣う」という切り口で販売増を狙う。
高価格帯のバッグなどを製造する土屋鞄製造所は、数年前から「レザーチョコレート」をテーマにしたバレンタイン限定の商品を販売している。今年は、トラベルケースを1月から投入しているが、Web販売分はすでに完売した。全国の直営店舗でも同商品の売れ行きは好調という。
担当者によると、企画時点でプレゼント用としてだけでなく、自分用として購入する用途も想定していたという。また、遊び心のある限定商品を出すことで、主にビジネス用途で同社の商品を購入する顧客に、ファッション性がある商品もあることを感じ取ってもらう狙いがある。
「他人用でなく自分用も買いたい」「大切な人に感謝を伝えたい」――。こういった消費者のニーズをとらえることで、新しいビジネスのヒントが生まれそうだ。
関連記事
- 日清、“麺の花束”「ヌードルブーケ」発売 プロポーズのお供にぴったり?
日清食品が、「カップヌードル」をブーケ風に束ねた「ヌードルブーケ」を発売。プロポーズや愛の告白でのプレゼントを想定。「あなたの想いが3分で伝わる」としている。 - 恵方巻きの大量生産「もうやめに」 発信したスーパーの思いを聞いた
恵方巻きの大量廃棄が問題視される中、兵庫県のスーパー、ヤマダストアーの折り込みチラシが話題に。「もうやめにしよう」と銘打ったメッセージを発信した意図を聞いた。 - 恵方巻の高額化が止まらない理由
百貨店やスーパーで強気の価格設定をした恵方巻が売れている。背景にある消費者の心理とは? - コメを食べながら糖質制限 “低糖質ごはん”登場
ブルボンが通常のコメよりも糖質を抑えた「低糖質ごはん米」を発売。ブルボンの通販サイトのみでの販売だが、売り上げの状況を見て店頭販売も検討するとしている。 - “個性”を食卓に届ける 会津の若者の思いを形にした「とろねぎ」
全国各地の食材を取り扱うインターネット通販サイト「うまいもんドットコム」「築地市場ドットコム」などを運営する食文化。取締役の井上真一さんは、産地で眠っている青果や水産物などを掘り起こし、ヒット商品を生み出してきた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.