木造超高層ビルは建つか 住友林業が打ち出す構想とは:高さ350メートル
住友林業が2041年を目標に、高さ350メートルの木造超高層ビルを建設する構想を発表し、話題を呼んでいる。どのような計画なのだろうか。
2041年、大木のような超高層ビルが誕生するかもしれない。住友林業が木造の超高層ビルを建設する構想を発表し、話題を呼んでいる。高さは350メートル、地上70階建て。現在、国内にあるどの高層ビルよりも高い。どのような計画なのだろうか。同社に聞いた。
木材9割の構造
現在、国内で最も高いビルは、約300メートルの「あべのハルカス」(大阪市)。三菱地所がそれよりもさらに高い約390メートルの高層ビルをJR東京駅前に建設する計画もある。高さ350メートルは日本トップレベルの高層建築。それを木造で実現しようとするのが、住友林業が公表した構想「W350計画」だ。
41年に創業350周年を迎えることから、高さ350メートルを目標として設定した。建築面積は6500平方メートル、総工費は約6000億円になると試算している。建物は店舗、オフィス、ホテル、住宅として利用する想定だという。
このビルはどこにできるのか。この計画に建設場所は設定されていない。広報担当者は「東京都千代田区丸の内を想定した概要になっていますが、実際の計画はまだありません」と話す。建物の高さや構造などを決める際には、地震発生時の揺れ方を想定する根拠となる、地盤の状況などを条件として設定する必要がある。都心部の丸の内の条件に合わせて建物の概要を決めたが、実際に建設する土地を確保しているわけではない。
建物の構造は、木材の比率が9割を占める。柱と梁(はり)は、木材に鋼材を組み合わせた建材を使用。柱と柱の間に斜めに入れる、鉄骨制振ブレースという補強部材を使って、強度を高める。
外観イメージは、建物の外側を取り囲むバルコニーが特徴的。地上から高層階まで連続的に緑をちりばめ、超高層ビルでありながら「新鮮な外気と豊かな自然、木漏れ日に触れられる空間」を目指す。建物の中は純木造で、木のぬくもりが感じられる空間をイメージする。
この計画の実現に向けて、超高層ビルを木造化するための技術的な課題を洗い出すことから始めているという。その中でも大きな課題が耐火。既存の建材よりも燃えにくい柱や梁、内装材を作るための研究開発を進める。「耐火、耐震など、課題を1つずつクリアしていく」(広報担当者)
木材の大量使用が大きな効果に
木造住宅には、湿度調整や消臭などの効果があるが、超高層ビルの木造化による効果はそれだけではない。住宅や建材など、木を活用した事業を展開する住友林業は、今回の計画によって木材を大量使用できることによる効果を強調している。
例えば、CO2削減効果だ。木が育つ過程で吸収したCO2は、伐採されて木材となった後も炭素として貯蔵される。CO2を「固定化」する機能として知られており、この機能がCO2削減に貢献するとされている。今回の計画では、木材を18万5000立方メートル使用する計画で、住友林業の木造住宅約8000棟分に相当する(構造材のみ)。その結果、CO2を炭素として固定する量は約10万CO2トンになるという。
また、日本では国産材が有効活用されていない問題も指摘されている。国産材の需要を拡大すれば、森林の荒廃を食い止め、林業の活性化にもつなげることができる。
欧米では近年、木造ビルの建設が実現したり、計画が発表されたりと、木造建築に関する動きが目立つようになってきた。英国・ロンドンでは80階建ての木造高層ビルの建設構想が公表されている。
木造の超高層ビルはまだ構想段階だが、「2041年までにこの計画を実現できるように技術開発を進める」(広報担当者)ことを目標に掲げる。高層ビルが立ち並ぶ都市に、木の温かみが広がっていく光景が見られるかもしれない。
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