「街のビール屋さんを文化にしたい」 100店舗出店に燃える:多店舗出店の苦しみを乗り越える(3/4 ページ)
お店で醸造した出来たてビールと食事を提供するブルーパブを東京・高円寺に2010年に開業。8店舗まで拡大させてきた経営者がこれまでの苦労と夢を語った。
店舗数増加の一方で「人事の壁」にぶつかる
経営が軌道にのってきたところで2号店の準備にとりかかった。新店の経営に専念するためには高円寺のお店を信頼できる人に任せたい。夫婦共通の知人であるK氏に「ビール屋をやらないか?」と声をかけたところ二つ返事で引き受けてもらえた。
阿佐谷の2号店には「自分もビール醸造を学びたい」という若者が続々と集まった。気付いたら阿佐谷店の従業員は8人、高円寺の従業員は3人まで増えた。
経営は順調にみえたが、能村氏はここで壁にぶつかる。のちのちまでの経営課題となる「人事」の問題だ。
「阿佐谷のお店は盛り上がっていたのですが、高円寺で『置いてけぼりにされた』と感じたKさんが腐ってしまいました」
経営者にとっては信頼できる従業員に店舗をずっと任せていたい。地元客と顔なじみになることでよりきめ細やかなサービスが提供できる。地域ごとに異なる売れ筋のビールを把握することにもつながる。面倒な引継ぎ作業なども発生しないというメリットもある。「街のビール屋さん」というコンセプトを考えると店長が短期間で変わるのは避けたいところだ。
だが、従業員も1人の人間である。挑戦したいという気持ちもある。能村氏は悩んだ末にK氏を阿佐谷店に異動させることにした。
「なじみのお客さんには店長から異動の理由を伝えさせるようにしました。ポジティブな理由で店を移るんだと納得してもらうためです。店長が短期間で代わってしまうことになりますが、お店のメニューに『店長出身地の料理です』と記載するなどしてお客さんに早くなじむような工夫をするようにしました」
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