もはや飛行機は路線バスに 超大型旅客機が消滅の危機:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
「ジャンボジェット」の愛称で親しまれたボーイング747や、総2階建てで知られるエアバスA380など、いわゆる超大型旅客機が消滅の危機に瀕している。背景にあるのは……。
「ジャンボジェット」の愛称で親しまれたボーイング747や、総2階建てで知られるエアバスA380など、いわゆる超大型旅客機が消滅の危機に瀕している。背景にあるのは、航空輸送の活発化に伴う運行効率の向上である。
超大型機は、圧倒的な客室空間の広さが好評を博し、一部の顧客から熱烈に支持されてきた。しかし航空機はもはや路線バスと同じになっており、効率性が最優先される時代となった。ゆっくりと空の旅を楽しむ余裕がなくなってしまったようだ。
ボーイングもエアバスも業績は絶好調
2018年1月、欧州航空機大手のエアバス幹部が、総2階建ての超大型機エアバスA380について生産中止を検討していると発言し、市場に衝撃が走った。その後、A380の大口顧客であるエミレーツ航空から追加の発注があったため、当面は生産を継続できる見込みとなった。ただA380の販売不振は以前から伝えられており、状況が大きく変わったわけではない。
エアバスのライバルである米ボーイングも、ジャンボの愛称で親しまれた超大型機ボーイング747の生産中止を何度も検討している。同機についても一定のニーズが存在するため、生産を継続できる可能性も残されているが、機体としてのピークが過ぎたことは間違いないだろう。
超大型機が厳しい状況に置かれているのは、航空機が売れないからではない。世界の航空需要はうなぎ登りとなっており、両社の業績は好調だ。
ボーイングは17年に763機の航空機を受注しており、純利益は前年比でほぼ倍増となった。18年には過去最高となる815機の受注を見込んでいる。エアバスも増収増益となっており、民間航空機部門では7年先までの受注残を抱える状況だ。
ところが、各社が受注しているのは、ほとんどが中型以下の機体ばかりで大型機は低迷している。ボーイングが17年に納入した763機のうち、529機がボーイング737というロングセラーの小型機、136機は最新鋭の中型機であるボーイング787であった。大型機は90機ほど納入しているが、このうちの大半が双発で取り回しの良いボーイング777となっており、超大型機であるボーイング747はわずか14機だった。
年間14機ということになると、月産1機超のペースである。同機は1969年に初飛行したロングセラーだが、さすがに月産1機レベルになってくると、採算が厳しくなってくる。生産中止を検討するのは当然の成り行きといっていいだろう。エアバスも同様で、2017年に納入した718機のうち558機が小型のA320という機種であった。超大型機であるA380は15機しかない。
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