もはや飛行機は路線バスに 超大型旅客機が消滅の危機:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
「ジャンボジェット」の愛称で親しまれたボーイング747や、総2階建てで知られるエアバスA380など、いわゆる超大型旅客機が消滅の危機に瀕している。背景にあるのは……。
飛行機はもはや路線バスに
超大型機が苦戦しているのは、顧客であるエアライン各社が大型機に関心を示さなくなったことが最大の理由だが、これは皮肉なことに航空輸送の市場拡大と密接に関係している。
経済が停滞している日本にいるとあまり実感しないが、世界の航空輸送は驚異的なペースで拡大している。米国における旅客数は10年で20%、欧州は55%増加しており、アジア地域に至っては2.2倍になった。航空需要の増大に応える形で、多数のLCC(格安航空会社)が登場し、これが市場をさらに拡大するという効果をもたらしている。
LCCは基本的にコスト勝負なので、従来の航空会社とは異なり、搭乗率を極限まで上げる必要がある。特に欧州やアジア地域の場合、旅客数が少ない近距離路線が多数存在する市場構造のため、取り回しの良い中小型機の方が歓迎されやすい。大手の航空会社も、競争の激化から、基幹路線を飛んだ直後に、同じ機体をローカル路線に投入するといったきめ細かいオペレーションが必要となっている。
過去10年間の状況を見ると、航空輸送が急拡大した欧州とアジアでは、旅客1人あたりの平均輸送距離が顕著に短くなっている。旅客数が大幅に増えていることを考えると、近距離路線の比率が高くなったことが推察される。
ボーイング747やA380は、基本的に大量の乗客が見込める基幹路線にしか投入できないので、こうした大型の機体を保有していると、航空会社の運行効率は下がってしまう。つまり市場の拡大によって、航空機は路線バスのような存在となり、これが超大型機の活躍する場を狭めているのだ。
しかしながら、この現象は皮肉というよりほかない。なぜなら、こうした市場拡大の原動力となってきたのが、他ならぬ超大型機だからである。
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