首脳会談決定で高まる、米朝開戦のリスク:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
史上初の米朝首脳会談が決定したと発表された。この衝撃のニュースをどう理解すべきなのか。会談が本当に実現すれば、もしかしたら米朝開戦に一歩近づくことになるのではないか。なぜなら……。
本当に会談は実現するのか
まず確認しておきたいのは、両者が何を求めているのかだ。米国は北朝鮮の核開発を止めさせたいし、米国に届くミサイルの開発を中止させたい。また核保有国であることを絶対に認めたくない。一方の北朝鮮は金王朝による独裁体制を維持し、朝鮮半島から米軍を撤退させ、その先には自分たちの望む形の南北統一がある。これらを前提として話を進めたい。
1つ目は、そもそも実際に会談が実現するかどうかはまだ不透明だということだ。確かに、会談を行うという発表のインパクトはかなり大きかった。だが米国では、すぐにそのムードは一変している。
会談発表の翌日、ホワイトハウスのサラ・ハッカビー・サンダース報道官は記者会見で、「トランプ大統領は北朝鮮が具体的なステップと行動を示し、大統領が何かを得られない限り、会談は行わない」と発言してしまっている。つまり、早々と会談に応じるという発言の撤回にも近いコメントをしているのである。
また具体的なステップと行動を北朝鮮が米国に見せないと会談が実現しないのなら、そもそも会談すら必要ないという話もある。つまり、会談をせずとも非核化に向けた具体的なステップについて確認できるなら、その時点で首脳会談を実施する必要はないのではないだろうか。
さらに、事前の具体的なステップについて、会談までに米朝間でかなり複雑で重要な交渉が行われることになるはずだ。だが実は、米国には交渉にあたる人材が決定的に不足している。米国務省はこれまで北朝鮮問題を担ってきたジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表が3月で退任すると発表。後任は決めないとの話もあり、現在も空席のままだ。
また、この連載でも以前指摘したが、トランプ政権になってから在韓米大使は不在のままだ。つい最近、米国一の北朝鮮専門家といわれる米ジョージタウン大学のビクター・チャ教授が在韓米大使に内定していたが、話は立ち消えになった。というのも、チャ教授が米国の対北朝鮮軍事攻撃に批判的だったからだといわれている。
もちろん表に出てこないだけで、水面下で米朝間のやりとりを行っている人たちもいるようだが、やはりきちんと責任を持って交渉に当たる特使は必要だろう。ちなみに3月13日にトランプはレックス・ティラーソン国務長官の解任を発表したが、これは数カ月前から言われていたことで意外ではなかったし、国務省の予算カットを支持していたティラーソンが国務省で嫌われていたということもある。
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