新聞購読が減っているのに凸版印刷がチラシで稼いでいる理由:苦節5年で黒字化(4/4 ページ)
新聞が読まれなくなり折り込みチラシの量は減っているのに、チラシの事業で凸版印刷が稼いでいる。本格的なビジネスモデルを確立してから黒字化するまでの道のりとは?
スマホの普及と新聞購読の減少が追い風に
外部環境の変化もShufoo!が15年に黒字化する原動力となった。
1点目は、スマホユーザーの拡大だ。総務省の情報通信白書によると、スマホの個人保有率は11〜15年にかけて14.6%から53.1%にまで増加した。主要ユーザーである30〜40代に限っては90%弱だ。ユーザーがより手軽にチラシを読む環境が整った。
2点目は新聞購読者数の減少だ。新聞通信調査会の「メディアに関する全国世論調査(2017年)」によると、「月ぎめで新聞をとっている」と回答した総数は13年には8割超だったが、17年には7割を割り込みそうになっている。20〜40代に至っては、減少幅はさらに大きくなっている。若い世代を中心に新聞が読まれなくなった結果、折り込みチラシの総量が減少した。チラシを新聞購読者以外に届けたい企業と、新聞を購読しないがスーパーの特売情報を知りたい消費者が増えることになった。
こういった戦略転換と外部環境の変化により、Shufoo!のサービスは15年以降も事業単体では黒字の状態が続いている。チラシや商品情報を掲載する企業が増え、情報量が豊富になり、ユーザーがShufoo!に集まるという好循環が生まれているためだ。
Shufoo!はスマホの機能を生かした新サービスを次々と導入している。各店舗の売り場担当者や店長が特売情報を周辺住民に配信できる「ミニチラ」が一例だ。従来のチラシのようにチェーン本部が1週間前に一括で特売情報を発信するのではなく、タイムリーな情報配信が可能になる仕組みだ。
順調にみえるShufoo!のサービスだがリスクもある。Shufoo!が好調なのはチラシ掲載量が日本最大級というプラットフォームの地位を確立しているためだ。現在、企業が消費者に直接情報を届けるダイレクトマーケティングが広がっている。Shufoo!を通さない販促活動が本格的に普及すると、その地位は脅かされるかもしれない。
消費者が集まるメディアとしての地位を維持し続けることができれば、Shufoo!はさらに成長を続けられるだろう。
関連記事
- TENGAの新規事業 「性の悩み」を真面目に解決
性生活を楽しむグッズを製造するTENGAが新規事業を立ち上げた。医師とともに男性の“妊活”アイテムを真面目に開発。新会社を設立して事業を軌道に乗せるまでの経緯とは? - すぐに成果を求めてガチガチに管理するような新規事業は失敗する
ビジネス成長のために新規事業を立ち上げようとする会社は少なくない。しかし、成功よりも失敗する会社が多いのではないだろうか。それはなぜだろう? - “優秀ではない”人が「ゼロイチ」に向いている理由
「優秀ではない人こそ、ゼロイチに向いている」――。そう語るのは「Pepper」の元開発リーダー、林要氏だ。林氏の考えるゼロイチを生み出すリーダーに求められる資質とは? - 急成長中の日本ワイン 礎を築いた先駆者たちの挑戦
日本で本格的なワイン造りが始まってから140年。いまや急成長を続ける「日本ワイン」はいかにして生まれ、発展してきたのだろうか。先人たちの苦闘と挑戦の歴史を追った。 - スーパーに産直売場 仕掛けたベンチャーの大変革がスゴイ
今、農産物直売所が好調で、市場規模は1兆円弱に達しているのをご存じだろうか。その一方で、従来のスーパーマーケットに対する消費者の不満は大きい。その穴を埋めるべく、あるベンチャーが仕掛けたのは……?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.