新聞購読が減っているのに凸版印刷がチラシで稼いでいる理由:苦節5年で黒字化(3/4 ページ)
新聞が読まれなくなり折り込みチラシの量は減っているのに、チラシの事業で凸版印刷が稼いでいる。本格的なビジネスモデルを確立してから黒字化するまでの道のりとは?
チラシの掲載企業を増やすのに苦労した
Shufoo!が躍進した背景について、プロジェクトを統括するメディア事業推進本部メディアマーケティング部の亀卦川篤部長は「きちんとチラシが読まれていていることを理詰めで企業に説明してきたから」と解説する。
チラシに限らず、企業が最も気にするのは「広告が消費者に届いているか?」ということだ。Shufoo!の掲載企業数を増やすには、Shufoo!にチラシを掲載するときちんと消費者に読んでもらえることを伝える必要がある。
そこで同社は企業への説得材料として「チラシの成果を見える化する」「紙のチラシと比べたときの費用対効果を提示する」ことに取り組んだ。
まず、どの地域に住むユーザーがどのチラシをどのくらい読んだのかといった詳細な情報をリアルタイムでチラシ掲載企業と共有した。「チラシ効果を水増ししているのでは?」という疑念をなくするためだ。「チラシPV」と呼ぶ評価指標も導入した。消費者がスマホやPCの画面にチラシを完全に表示したり、チラシを拡大してタップしたりすることで1回閲覧したと見なすものだ。
集客効果もアピールした。新聞の折り込みチラシを特定エリアに配布すると同時に、Shufoo!にも同じチラシを掲載する。来店した客に「どこでチラシを読みましたか?」というアンケートを実施する。すると、お客1人あたりを集客する効果が比較できる。
費用対効果も掲載企業に明示した。「スーパーの場合ですが、電子チラシは紙のチラシの3分の1のコストで情報を届けられることを企業にアピールしました」(亀掛川部長)。紙のチラシを消費者に届けるコストには、紙の印刷費や新聞販売店への手数料が含まれる。Shufoo!に掲載したほうが安く情報を消費者に届けられるだけでなく、費用対効果も高いことを説明したのだ。こういった戦略が奏功し、Shufoo!にチラシを掲載しようという企業の数が増加した。
収益モデルは11年から完全に変更した。企業がチラシを掲載するたびに料金を支払うのではなく、チラシが閲覧される回数に応じて費用が発生する方式に変更した。既存クライアントからは反発もあったが、成果を見える化させることで納得してもらった。
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