「森友問題」を解決する秘策は、ある:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
森友学園の国有地取引を巡って、財務省の決裁文書改ざんが表面化し、問題が再燃している。公文書にまつわる問題を一気に解決する方法がある。それは「ブロックチェーン」だ。
ブロックチェーンなら不正できない
もはやブロックチェーンについて説明する必要はないかもしれないが、ここで簡潔に解説したい。
そもそもブロックチェーンとは、コンピュータのネットワークで金融取引などの記録を管理する技術で、複数のコンピュータが取引の記録されたブロック(公開された台帳)を共有し、検証や承認をし合いながら、正しい記録を鎖のようにつないで残していく仕組みだ。
この仕組みは、要するに分散型の台帳であり、複数が記録を共有・検証・承認するので、記録改ざんなど不正行為をすることができない。
一橋大学名誉教授である野口悠紀雄氏の著書『入門 ビットコインとブロックチェーン』(PHPビジネス新書)には、ビットコインについて非常に分かりやすい例が出てくるので、一部を紹介したい。
野口氏は、従来の記録管理を「集中管理システム」、ブロックチェーンを「分散システム」と説明している。そして集中管理システムについては、「王様が全ての取引情報を記帳しています。従って、『王様は不正をしない』と人々が信じていることが重要です」とし、一方で分散システムでは「『町の中心に置いた誰もが読める「石板」』に記録しています。情報は石板に書かれているために、書き換えられないのです。だから信用できるのです」と解説している。
つまり銀行や政府が集中管理する場合、そこに不正などが起きる可能性がある。一方、分散型なら、複数が確立されたシステムで取引や情報を承認し、記録し、公開されて管理が行われるために、事実上、不正が起きない。また誤りも減る。
いま世界では、このブロックチェーン技術を仮想通貨以外で使う試みが始まっている。例えば中米ホンジュラスでは、17年に、公有地の登記の改ざんなど詐欺行為が横行しているとして、ブロックチェーンの導入を決めたと大きく報じられた。もっとも、現在もこのプロジェクトはまだ実現には至っていないが、そもそも、実現しようがしまいが、そのコンセプトは特筆すべきものだと言っていい。
途上国であるホンジュラスは、土地権の詐欺行為が行われており、頭を抱えている現状がある。どういう詐欺行為かというと、土地所有権の記録にアクセスできる一部の人たち、つまり管理側の政府高官や官僚などが勝手に土地所有権を書き換えたりして、土地などを搾取してしまうのだという。つまり信用すべき「王様」が不正をしているのである。
政府高官など既得権益を得た権力者がやりたい放題になりがちな途上国では珍しくない話かもしれないが、言うまでもなく公文書の改ざんはあってはならないことだ。そこでブロックチェーンで土地の所有者や売買記録などを分散型の「台帳」で管理し、オープンで不正ができないブロックチェーンでこの悪しき現状を打破しようとしているのである。
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