日本ハム本拠地移転、JR北海道はチャンスを生かせるか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)
日本ハムが本拠地球場を北広島市へ移転するという。新たな拠点はJR千歳線の線路ぎわだ。しかしJR北海道社長は新駅設置に慎重な姿勢と報道されている。素直に北広島市の歓迎ムードに乗じておけばイメージアップにつながるだろうに。残念な発言だ。
いや、いっそのこと「当社負担で新駅を設置するから、ホテルとショッピングモールはJR北海道グループの札幌駅総合開発でやらせてもらえないか」くらいのことは言ってみたらいい。恐らく北広島市と球団は、大きな構想を決めたものの、札幌ドーム、札幌市街から離れているだけに、集客に関しては不安もあるはずだ。大量輸送手段である鉄道の協力は心強い。「JR北海道が北広島市に貸しを作るチャンス」とも言える。
みどりの窓口で野球観戦券や観戦券付き乗車券の発売、道内各地から観戦客向け直通特急列車の運行、関連会社にとっては優勝記念セールの開催など、私から見ればチャンスだらけだ。鉄道職員だって、JR北海道と日本ハムファイターズが協力関係を結べば、球団のワッペンを貼った制服で接客できたり、イベントを開催できたり、楽しい企画が実現できて士気も上がるというもの。
格好つけて相手の申し出を待つなんて、もったいぶっている場合ではない。もっと積極的に関わってチャンスを増やすべきだ。北海道民に人気の日本ハムファイターズにあやかり、ボールパーク歓迎の気運に乗れば、企業イメージのアップにつながる。そういう空気を読めないところがJR北海道の残念なところだ。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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